サッカー日本代表の欧州遠征(2020年10月)を総括する

サッカー日本代表の欧州遠征(2020年10月)を総括する

サッカー日本代表の久しぶりの活動となった10月の欧州遠征が終了しました。対戦相手にコロナ陽性反応が出たりもしましたが、無事全日程を全うすることができました。

そんな欧州遠征を振り返りたいと思います。2022年開催のカタールワールドカップに向けてどういう実りや課題があったのかを紹介します。

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試合結果

2020.10.09 対カメルーン代表 0-0引き分け

2020.10.13 対コートジボワール代表 1-0勝利(得点:植田/アシスト:柴崎)

採用フォーメーション

4-2-3-1 2試合ともスターティングフォーメーション。後半途中まで採用

3-4-2-1 2試合とも後半途中から採用。状況に応じ3-2-4-1、5-2-2-1

採用戦術

数的優位に基づく守備からのショートカウンター&サイドを起点とした攻撃

招集メンバー

FW 大迫勇也(ブレーメン)/鈴木武蔵(ベールスホット)

MF 南野拓実(リバプール)/久保建英(ビジャレアル)/鎌田大地(フランクフルト)/伊東純也(ヘンク)/堂安律(ビーレフェルト)/原口元気(ハノーファー)/三好康児(アントワープ)/柴崎岳(レガネス)/遠藤航(シュツットガルト)/中山雄太(ズヴォレ)

DF 吉田麻也(サンプドリア)/冨安健洋(ボローニャ)/植田直通(セルクルブルージュ)/板倉滉(フローニンヘン)/菅原由勢(アルクマール)/酒井宏樹(マルセイユ)/安西幸輝(ポルティモネンセ)/室谷成(ハノーファー)

GK 川島永嗣(ストラスブール)/権田修一(ポルティモネンセ)/シュミット・ダニエル(シントトロイデン)

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成果①:守備意識とインテンシティの浸透

攻守の切り替えスピードへの意識の高さは十分見ることができた。各人とも身体能力に優れた相手に一対一を恐れず粘り強く対応する姿勢も合格点と言える。W杯本大会レベルのアフリカのチーム相手ではなかなか一対一で奪いきることはできないが、それでもチームとして集中力を切らすことなく2試合通じて無失点で抑えたのは評価できる。

もちろんトレーニングマッチであるため、相手の強度も緊張感も本大会とは違う。なので、この2試合の守備については、本大会では最低でもこれくらいは集中しないとやられるという最低基準にすることが大事になるだろう。アジアの試合でいつも忘れてしまうので、アジア予選でも意識高く実践してほしい。

選手の観点で見ると、総じて出場全選手良かったが、中でも評価の対象になるのは、南野、吉田、冨安だろう。

南野はリバプールでクロップに鍛えられてる守備力の成長がかなり見えた。切り替えのスピード、コースの切り方、身体接触にいくタイミング、味方を助ける守備方法の判断、とチームが守備戦術を遂行するにあたって重要な役割を果たしていた。

吉田と冨安に関しては、もともと読みやプレーの判断、フィジカルの使い方などの安定感はあったが、この欧州遠征ではさらにレベルを上げていた印象だ。シチュエーションに応じたプレー判断だけでなく、アフリカの選手の身体能力を考慮したうえでのインテンシティの強弱の判断も適切だった。守備のDNAが息づいているセリエでポジションを獲得しているだけのことはあると思わせるプレーであった。ビルドアップは課題ではあるものの彼らより上手い日本人ディフェンダーも見当たらない以上彼らが現状ベストである。

成果②:本大会仕様のチームビルディングに着手できたこと

守備戦術もそうだが、久保を左サイドで起用したことが最もわかりやすい出来事だろう。右でもトップ下でもなく久保の最も不得手である左サイドで起用したことは、本大会に向けたチームづくりの最初の一歩だろう。

久保は日本で唯一世界のどこのチームが相手でも一人で相手を剥がせ、一瞬で自チームに優位性をもたらし相手チームに劣勢を強いることのできる選手である。

彼が左サイドで右やトップ下同様のクオリティを示すことができるようになれば、日本代表のスカッドの幅が大きく広がる。久保を右・トップ下・左・偽9番どこでも置けるという状況になれば、相手や状況に応じてその配置を変えることができ、さらに、他の日本の持つ攻撃の駒をその特徴に応じて配置できる。

つまりこの選手をエース選手として常時使いながら、戦術の選択肢の幅が大きく広がるということだ。この欧州遠征に招集された選手だけでなく、日本はこのポジションに多くの才能が揃うためメリットは大きい。

これまでとの比較で言えば、戦術的にデメリットの大きい中島を軸に考える必要がなくなる点も大きい。

課題①:攻撃の時間の創出

この2試合を通じて守備はそれなりにうまくいったが攻撃の時間はあまり作れなかった。相手のレベルも高く、コンディションも良かったことから、相手の攻撃の時間が長かったというチーム同士の力関係によるものが大きいが、これでは本大会で勝ち点を奪えないだろう。

勝ち点を奪う、つまり得点を奪うのは、守備で力尽きていては不可能だ。ましてや本番では親善試合とは比にならないくらいのプレッシャーや緊張感がかかってくる。この2試合は攻撃の時間が少なくても親善試合であったことから幸い90分守備力を維持できたが、本番では持たずに100%失点するだろう。

日本の本大会における実力からすれば、これくらいの守備は最低限しないといけないことは前提となるため、得点に向けたエネルギーと集中力を保持するためには、攻撃の時間、ボールキープをする時間、自分たちが能動的に行動する時間、相手を受け身にする時間をもっと作る必要がある。

久保をエース選手として起用する目途が立てばこの課題は解決に向けて大きく前進するが、それだけに頼っていては不十分だ。

日本サッカーが過去信奉していたティキタカは必要ないし、不要なキープも必要ないが、どちらかのサイドで起点をつくり、逆サイドに揺さぶる、相手に守備ブロックを作られたらセンターラインでくさびを打ち隙を創出するためにしつこくボールを運ぶ意識は欲しい。正直この点日本の質は高くないため(パス精度・スピード・タイミング、スペース創出のためのポジション取りなど)、これからの試合を通じて意識とクオリティを高めてもらうとともに、個々人の日々での成長を望みたい。

課題②:監督の采配(フォーメーションの選択等)

森保監督は日本人監督らしく、チームビルディング、チームマネジメントに関しては日本人らしく誠実に一段ずつ段階を踏んで実行している印象はあるが、試合での勝負師としての能力はやはりこの欧州遠征でも疑問が残った。

フォーメーションの選択、選手起用は親善試合として”色々試しつつ、選手のモチベーションを維持しつつ、勝利を目指す”という本番とは明確に違う緊張感の中での采配には意図を感じることはできるが、ただ勝利(引き分け)が必要な本番のシチュエーションとして考えた場合やはり疑問が残る采配であった。

恐らく2試合とも4バックから3バックにフォーメーションを変えた目的は、勝利を目指しつつ最低でも引き分けるという狙いにあると思われるがこれが中途半端だった。

3バックはサイドで起点をつくりハーフスペースを活用する攻撃を重視する現代サッカーにおいては広範なスペースギャップが生まれるため弱点しか見当たらない。この弱点はサッカーの世界では常識になっており、採用しているチームは今やほとんどないくらいだ。だから3バックを信奉する森保監督の哲学には疑問が残る。

また、3バックのこうした弱点を補うため、ピッチ内の選手はベンチからの指示に関係なく本能的に5バックになることが多い。そして5バックになるということは攻撃のイニシアティブをすべて相手チームに預けることと同義だ。格下のチーム相手ならまだよいが、互角以上の相手にこのフォーメーションを採用するのは少なくとも論理的ではない。

この試合でも実質的には5バックになっており、攻撃を放棄することと同義になっている。さらに実質5バックになると想定されるのにも関わらず、両サイドには攻撃の選手を配置している。非常に中途半端だ。試すという目的も含まれていることから親善試合ではまだ許容できるが本番でのこの采配は支持できない。自身の哲学も含め、森保監督には良く考えて欲しい点だ。

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