久保建英のレアル・マドリードでの可能性

久保建英のレアル・マドリードでの可能性

マジョルカへの今シーズン期限付き移籍が決まった久保建英。

報道によれば、1年間(今シーズンのみ)延長なしの契約とのことである。

これは、レアル・マドリーが来シーズンはトップチームの戦力として期待したいという希望の現れであると考えられる。マジョルカへの貸し出しは、そのための武者修行ということであろう。

さて、そうした状況の久保建英であるが、実際にレアル・マドリードでのトップデビュー、さらには活躍の可能性について、どう考えられるであろうか。

今年6月に電撃的にレアル・マドリードと契約した後、7月頭にチームに合流し、北米遠征を皮切りに先週のリーグ開幕まで、トップチームに帯同し、トレーニング・プレシーズンマッチをチームメイトである世界のトップ選手たちとともにこなしたが、その中で見せたプレーや態度、周囲のコメントからうかがえる評価などから検証してみたい。

Advertisement

まず、チームプレーの前提として必要となるピッチ外でのフィットという点であるが、これはもうトップチームでの活躍にあたって100点満点であったと考える。

これまでの海外移籍した日本人選手は外国語能力が乏しいことから、(海外に比べると)内向的な性格も相まって「プレーで見せれば認められる」という視点で求道者のような面持ちで海外チームに挑戦していた雰囲気が少なからずあったが、久保の対応はこれとは一線を画するレベルであった。

スペイン語を操れるというのは大きいが、普通は気後れしたり気を使ったりしてしまう世界のトップ選手たちを相手にスペイン語と英語を駆使して適切に話しかける姿を見せていた。

語学能力もさることながらチームメイトのメンタリティや雰囲気を瞬時に察して適切なタイミングと言葉でコミュニケーションをとる姿は既に日本人歴代トップの選手のそれと言っても過言ではないだろう。

また、多くの日本のサッカー選手にプレーのトレーニングと同じくらい、いやそれ以上に語学の勉強が必要であるということを強く認識させたのではないだろうか。

アザールに自分から話しかけて笑いあうシーンや他のチームメイトと同様通訳を横に置かず直接監督であるジダンから指示を受けるシーン、セルヒオ・ラモスやマルセロとトレーニング中言葉を交わすシーン、クラブインタビューや企画などでスペイン語で答えるシーンなどは同じ日本人として誇らしい気持ちになったものである。

ジダンとも個人面談の場があったことなども報道されていた。やはりコミュニケーションというのはプレークオリティと両輪で重要なものであり、久保はこの点は全く問題ないどころかマドリーのトップチームに相応しいレベルの選手であることを既に証明しているのではないだろうか。

次に、ピッチ内でのフィット、つまりプレー面であるが、これはトップチームで「通用する」さらには「クラブの未来となるポテンシャルを持っている」という評価は確たるものが得られたと考える。

一方、チャンピオンズリーグのみならず参加する全てのコンペティションでタイトルを狙うレアル・マドリードという世界一のチームにおいて「勝ち点をもたらす戦力」としての評価はプレシーズンでは勝ち取れなかったというのが客観的な見方だろう。

プレシーズンマッチやトレーニングで見せるテクニックやボールコントロール、足裏を使ったタイミングと視野の取り方、左足の精度の高い緩急使い分けられるキックの質、センスの塊のようなプレーリズムの創造、といった特長は十分ジダンを含む首脳陣やチームメイトを驚かすものを見せていたと考える。

このように才能やスキルには疑いの余地なしという評価を確固たるものにしていった一方、プレー適性やポジションについては悩ましい側面を見せている。

久保にとってデビューゲームとなったバイエルン戦では、ジダンから「自信を持って最後の30mのエリアでは勝負してフィニッシュまでいけ」という指示をもらって後半からトップ下のポジションで出場。

多くの指導者は若い選手の緊張のデビューゲームでは可能な限り一番リラックスでき能力を発揮できるポジションで出場機会を与えるものである。ジダンが久保のことを攻撃的に特別な才能のあるいわゆる10番選手の部類として見ていることはこの試合から既に明らかだった。

その後、アトレティコ戦ではセントラルMF、フィネルバフィチェ戦では偽9番的なポジションでも試されたが、トップ下かその前(偽9番)のポジションでプレーしたときに良いプレーを見せていたことに疑いの余地はないだろう。

なお、FC東京では右サイドのMFを務めていたが、ジダンはこのポジションでの機会を一度も与えていない。サイドの選手ではないという評価は最初から明確だったと思われる。

さて、これらのことから、「攻撃面で特別な才能を有しており、左利きでトップ下(あるいは偽9番)で最も才能を発揮できる適性を持つ選手」というクラブ内での評価になっていったと考えられる。

そうなると次はトップチームの陣容と戦術に久保の能力をどう生かすかという相対的な検討が必要になるわけだが、ここで優先順位の上位に置かれなかったということだろう。

現状においてトップチームの戦術でトップ下・偽9番を置くシステムは採用していない。つまり、久保が最も能力を発揮できるポジションは用意しないとないということ。

仮に用意するとなればチーム全体の工事が必要になるため、他のメンバーの能力や適性と現時点での久保の能力との比較の結果、ポジションの用意は難しいという結論に至ったものと考えられる。つまり、現時点ではレギュラーの戦力としてカウントできないという判断となったのだろう。

ポジション面での理由のほかにも、ジダンは久保に対し個人面談で「継続性」と「能力の最大化」を要求したという報道もあったが、これはフィジカルコンディションの向上とその継続性の確保により、才能と能力のゲームへの影響力を高めてほしいということだと思われる。

そうした点はまだ改善の余地ありと判断しているのだろう。実際にゲームやトレーニングではつぶされる場面も散見され、消える時間もあったことから、この評価も十分理解できる。

これらのことを踏まえて、レアル・マドリードのトップチームでの可能性について考えると、デビューさらには活躍の可能性は十分にあると考える。

ピッチ外での評価はもう活躍に値するものだと考える。

あとは、ピッチ内で必要な評価として、フィジカルコンディションとポジション・適性である。

まず、フィジカルコンディションであるが、これは慣れとトレーニングで十分改善できるものである。マジョルカでの試合経験はまさにこの点を補うものであり、大きな怪我による長期の戦線離脱以外に全く心配の必要はないだろう。

次に、ポジション・適性であるが、これはそのときの監督や陣容、クラブ方針によって不透明な点はあるものの、トップ下や偽9番のポジションをチームに用意させるという視点で考えるなら、相応の実績(ゴール数・アシスト数)をマジョルカで残すことが必要になる。

実績への信頼度が世界一のチームにおけるポジションを用意させる最もわかりやすい説得材料となるからである。

レギュラーとしてポジションを用意させることを目指すなら、10ゴール・10アシストが最低目標だろう。

オプションとしてポジションを用意させることを目指すには、5ゴール・5アシストが最低目標だろう。

ただ、マドリーとしても現戦術以外のオプションが欲しいと思っていることは間違いないため、まずはオプションとしての目標達成を目指したいところ。

久保なら十分射程範囲内だろう。また、マドリーとの対戦、バルサとの対戦で結果を残せばそのインパクトは絶大であることも添えておきたい。

なお、違う適性の獲得を目指す視点も考えられる。一部報道でモドリッチの後継者という話も出ていたが、可能性があるとすれば、陣容や戦術、クラブの方針を踏まえてもサイドのポジションよりもここだろう(伝統的に少なくともどちらかのサイドには縦への強度のある世界5指に入る人材が常にいるチームのため)。

ただし、世界トップレベルのプレークオリティが90分間全方位に必要となるポジションのため、かなりハードルは高い。加えて、守備やバランサーに回る時間も多くなるため久保の攻撃的能力が鳴りを潜めてしまう可能性が高い。

そう考えると、一見難しそうだが、トップ下・偽9番のポジションを用意させる視点のほうが個人的には可能性が高いと考える。しかもまだ18歳。ポジションを妥協するのはもう少し後になってからでもいい。そうした視点のほうが高みに到達できるはずだ。

いずれにせよ、まずはマジョルカでの冒険を見守り、応援したい。