久保建英のヘタフェでの2020-2021シーズンを展望する

久保のヘタフェへの期限付き移籍が決定した。
ビジャレアルではプレータイムが限られていたことから半年で違うチームに行くことを決意したようだ。
筆者としては、ビジャレアルという過去日本人選手が一度も活躍したことのないレベルのチーム(世界トップリーグの上位争いを演じるチーム)で、その壁を超えて欲しい気持ちがあったのが正直なところだ。
だが、このヘタフェへの移籍の決断は論理的にも納得できるものであることもまた事実で、勝手ながら全面的に支持したい。
10代の選手にはプレータイムが何よりも重要であり、特に久保はその学習能力の高さから試合に出てこそ成長速度が速まる選手だからだ。すべて全盛期を迎える年齢で真のワールドクラスとなることから逆算しての決断であることが伝わってくる。(しかもこの年齢での移籍は別にキャリアの後退でもない。)
これまでの日本人選手の多くは高いレベルの環境こそ自分が伸びるのに必要であると信じて試合に出られなくてもそのチームにしがみつく傾向が強かったが、久保はスパッと決断した。
彼の聡明さがよくわかる決断でもある。
この移籍については、いろいろな見方や思いを抱いている人も多いことだろう。
しかし、人間は過去には戻れない。時間は進み続ける。
久保の冒険は続くのだ。
彼が優れた才能を持つ日本サッカー史上最高の選手になり得る、あるいは真のワールドクラスになる可能性を持つ唯一の日本人選手であることに変わりはない。
そこで、ここでは新たな冒険を始めたヘタフェでの久保について展望したい。
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目標は5ゴール5アシストだ。
2020-2021シーズンも残り約半分だ。
筆者は久保の2020-2021シーズンに期待したい目標(来季マドリー復帰の目安)として、以前年間10ゴール10アシストと言ったが、さすがに合流したばかりのチームにおける残りの試合数でこの数字は現実的ではないだろう。
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よって、その半分5ゴール5アシストを達成して欲しいと考える。
来季マドリー復帰については少し遠ざかっている状況かもしれないが、それでも彼の能力と成長度を考えれば妥当な目標と考える。
昨季のマジョルカでは4ゴール4アシストであったが、残り約半分となったシーズンでこの数字を上回りたい。
これを達成できれば、成長速度が落ちていないどころか上がっていることを証明できるものでもあるからだ。
奇しくも久保のヘタフェでの背番号は5である。久保の決意の表れというわけではなくチームの現在の欠番をそのまま着用することになっただけだと思うが、縁ある数字となることを期待したい。
ヘタフェの好成績に貢献すべし。
現在降格争いに片足を突っ込んでいる状態のヘタフェであるが、本来このポジションにいるチームではない。
現監督のボルダラスが率いるようになってから3シーズンになるが、その間常に8位以上をキープしているからだ。(2018-2019シーズンには5位になっている)
つまり今シーズンの目標は、7位以上つまりEL(予備選)出場権獲得だ。
勝ち点差はまだ開いておらず(本日時点でヘタフェ20、7位グラナダが27)、十分射程圏内である。
このチームとしての目標達成に大きく貢献することも久保にとっては重要だ。久保が5ゴール5アシストを記録すれば、必然的にチームの目標も達成することになるかもしれないが、それだけでは足りない。
つまり、チームの勝利に貢献するためにはチーム戦術の遂行が必要になることも忘れてはならない。
インテンシティの高い守備の遂行も重要だ。
ヘタフェはインテンシティの高いハードな守備を戦術における基本コンセプトとしている。ピッチに立つ選手は共通理解のもと、全員このタスクを遂行しなければならない。
ヘタフェにおける久保にとって、適応と成長が最も望まれるポイントだろう。
ただ、純粋な守備力の向上は必要になるものの、守備に奔走し攻撃の力を失っては本末転倒となる。この点について、監督やチームメイトと自身のストロングポイントをすり合わせる作業が必要になるだろう。
魅力的なプレーを期待したい。
チーム戦術にアジャストしていくことは重要だが、それ以上に期待したいのは、やはり見る者にとって魅力的なプレーだ。
天に選ばれた選手にしか持ちえない能力を久保はたくさん持っている。
彼がピッチに立つ時間が長ければ長いほど幸せになる人は増える。そういう類の選手である。
どのチームでも、例え守備重視のチームでもそれは変わらない。
”バルサ印のレフティユニット”の形成を期待。
魅力的なプレー見せるためにはチームメイトとの連携が必要になるが、その点については期待しかない。
何の縁か、ヘタフェには、久保の他、アレーニャ、ククレジャというバルサ出身の選手がいる。
ククレジャは昨季バルサからヘタフェに加入、アレーニャは久保同様今冬バルサからレンタル移籍で加入している。
全員ヘタフェでは日が浅く、年齢も近い(ククレジャ・アレーニャは同学年で久保の3つ上)。
加えて、3人とも左利きで、ポジション争いの競合性も低い。(右:久保、左:ククレジャ、中央:アレーニャが基本)
こうした条件が揃っているのだから友情や連帯を築くのは難しくないだろう。
バルサ仕込みのコンセプトやテクニックは骨の髄まで染み込んでいる上に独特のプレー感性をわかりあえる左利き同士であることから、リーガ屈指の魅惑のユニットになる可能性があるとすら言える。
プレー適性的には若干違うがそれも非常にバランスが良いように感じる点も期待を高める。攻撃的な適性で言えば(=ポジション適性で言えば前目から順に)、久保>アレーニャ>ククレジャだろう。
魅惑のユニットとしてリーガを席巻することができれば、3人ともバルサから再度視線を送られてもおかしくはない。非常に楽しみだ。
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