今こそ、久保建英に日本代表の10番を託すべきときだ

今こそ、久保建英に日本代表の10番を託すべきときだ

久しぶりのサッカー日本代表の活動となる欧州遠征が近づいてきた。

2022年のワールドカップ本大会まで時間があるようでない。今回はコロナの影響による試合延期などで従来よりもさらに活動期間のない状況となることが予想される。

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こうした状況の中では、先日の記事でも書いた通り、過去の経験から学び、すぐにでも本大会仕様のチームに着手していく必要がある。アジア予選突破仕様ではない。アジア予選突破仕様の延長上に本大会仕様があるのではないことは過去の大会が証明している。もうダブルスタンダードでのチームビルドでは本大会でのグループリーグ突破以上の成績は望めないということだ。

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さて、本大会仕様のチームとは、”本大会”で勝ち点と勝利を手繰り寄せられるコンセプト、スカッド、戦術、コンディションを持つチームのことだ。それらの準備にはいくつかの手順が考えられる。クラブチームでは戦術・コンセプトに必要なスカッドを揃えるアプローチがビッグクラブを中心に採られることも多いが、活動時間の少ないナショナルチームではそうはいかないため、シンプルな方法を選択すべきだろう。

それは何か。最初にチームの色彩・キャラクターを決めてしまうことだ。日本代表は”こういう性格のチームだ”と言語化しなくてもチームメイト・スタッフ・サポーターが理解しているチームであることだ。これができれば、コンセプトやスカッド、戦術、コンディションの構築が容易になる。

つまり、チームの色彩を最も反映すべき(する)選手を中心選手として据えることだ。フォーメーションが云々、戦術が云々、コンセプトが云々、などは言葉のやりとりに過ぎない。表現により受け取り方も変わることは”日本らしいサッカー”という標語による失敗で皆理解していることだろう。結局一番人がわかりやすいのは人なのである。

そして、そのチームの色彩を最も反映する中心選手に相応しいのが久保建英であり、彼にサッカーの世界で最もアイコンとなる背番号である10番を託すことで、チームビルドの最初のステップがクリアされるのである。

では、他にも選手がいる中でなぜ久保が最も相応しいのか。

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なぜ久保が10番に相応しいのか

才能・能力

これは言うまでもないだろう。サッカー選手としての純粋な能力は他の日本人選手には持ちえないものである。

高いサッカーIQに基づくプレービジョンと瞬時の判断力、左足のコンパクトなキック、メッシ以外誰も真似できないボールタッチにおける細かいステップとドリブル、イニエスタを思わせる状況に応じた適切なポジショニングと身体のアングルの取り方、逆をついたり股を抜いたりする駆け引きのうまさ、空間察知能力の高さとそれを瞬時に有効に使うことのできるテクニック、バイタルエリアでのプレーの選択肢の多さ、・・・。

挙げたらキリがないが、90分通してのゲームへの影響度の高さは特筆に値する。

個性・パーソナリティ

日本人サッカー選手に欠けている世界で戦うための適性であるパーソナリティもまた本大会で世界と伍すに相応しいものを持っている。常にボールを欲しがり向かっていく姿勢(相手を抜く、ゴールを決める、決定的なプレーをするという強い意欲)を表現し、失敗しても頭を垂れない。ファールをされれば相手選手に食って掛かるし、ジャッジに納得いかなければ審判に対し抗議をし、積極的にコミュニケーションを図る。

こうしたピッチ内で見せる姿は日本が世界と戦う上でとても重要なことだ。言語力だけではない、精神的な頑張りだけではない、勝負に対するシビアな価値観が根付いている証だ。

さらに、ピッチ外では誠実で実直。日本人選手の海外での順応方法の一つにお茶らけていじられキャラになる、というのもあるが、久保にはそれは不要である。真面目な性格であることを肯定し、それにコンプレックスを感じることもなく臆することなく表現している。日本人の海外での理想の適応の仕方かもしれないくらいである。

また、これまでの代表は、相対的な実績から発言力の強い選手と、真面目で頭のいい選手による二重のリーダーシップでピッチ外でのチームの雰囲気が決まっていった側面があるが、それではなかなか難しい状況になるシーンを何度も見てきた。久保は1人でその両方の役割を果たせる個性を持っていると言え、こうしたダブルマネジメントのような弊害は起きないだろう。将来的にはキャプテンマークを巻かせてもなんら違和感はない。

こうしたピッチ内での積極的な部分とピッチ外での真面目な部分は、日本人で構成する日本代表がワールドカップでパフォーマンスを十分に発揮するにあたって素晴らしく相応しいことのように思う。久保を中心選手にすれば、その個性に導かれ代表の他の選手の価値観にも良い影響を与えることも間違いないからだ。これこそがまさにチームのキャラクターであるべきである。

ゲームに対する戦術的影響力の高さ

能力でも述べたが、久保は一個人の能力の高さだけではない。プレービジョン、ポジショニング、スペースの活用などは、味方チーム全体に好影響を与え、相手チーム全体を苦しめるものである。

戦況の見極め方やその戦況を見据えたプレーの判断、ポジション取りなどは、サッカーの基本であるトライアングルの形成を味方チームに促しチーム全体にパスコース、プレースペースを創出するし、相手チームにとっては次のプレーの優位性を確保するためのポジション取りを阻害させる要因となる。

いわゆるポジショナルプレーというものだが、日本人で実践できるのは久保だけである。こうした選手を万一にでもピッチに置かない、あるいは限られた時間しか置かない選択をするのは本大会で勝利を目指すうえで馬鹿げている。

プレースタイル・アイデア

久保は、今や世界で最も希少種となっている、いわゆる10番タイプの左利きである。プレーリズムは独特で、テクニックに優れ、アイデアとプレーの選択肢も豊富。見る者を楽しませることのできる輝きを持ったサッカー史上において数少ない属性に入る選手である。そうした選手に背番号10を授けることは純粋に見る者に興奮を与え、チームを応援する力につながる。

年齢・フィジカルコンディション

やはり2年後の本大会では、キャリアもそうだが、それ以上にフィジカルコンディションが上昇曲線を描いている選手が軸にいる必要性は高い。本大会では日本はチャレンジャーである。コンディションで相手に劣っていたら勝負にならないと言っても過言ではない。また大会期間中にコンディションも変わっていくこともあるだろう。だが総じて若い選手は耐久力があり回復力も早いものである。大会期間中の成長もあるかもしれない。

仮にベテラン選手をエースに据えた場合、その選手がコンディション不良になるとチーム力が激減する。そうしたリスクを避ける意味でも年齢とそれに付随する純然たるフィジカルコンディションは重要である。

久保は2年後は21歳。この点に関しては、これ以上ない年齢だ。

チームビルディングにおける重要性

本大会仕様にする必要性からこの記事を書いているが、であればこそ、久保に10番を託すことはなおさら重要である。これまでの森保監督の代表において10番は中島がつけてきた。中島もまだ老け込むような年齢ではないが、久保に10番を移行させることで、非常に明確にチーム内・チーム外に対して「本大会仕様のチームづくりに着手する」というメッセージになる。

監督としても強い意思表示であることが一瞬で伝わる。「〇〇をしながら○○を通してチームを仕上げていく」という説明なんかよりはるかに強くわかりやすいメッセージになる。チームビルドの面においてもメリットのほうが大きいはずだ。

なお、日本人の心情的にはなかなか一度あげた背番号を取り上げるというのは取り上げられる本人の気持ちなども考慮してはばかられる気持ちがあるかもしれない。

だが、中島は半年以上試合に出ていない。そして代表の活動も間が空き仕切り直しというようなタイミングである。このタイミングは天が望んだものではないかと思うくらいのやりやすいタイミングである。(むろん、こうした相対的な状況がなくても久保がつけるべきという考えについては一切変わりはないが。)

実績面

マドリーのプレシーズンでの堂々たる振る舞い、マジョルカでの成長とスコア(ゴールとアシストで年間約10ゴールを創出。これは同年代の世界的ライバルたちにも勝るとも劣らないリーグスコアである)、カンプノウでのブーイング、アトレティコ戦などでの圧倒的なパフォーマンス、強豪国の現役代表クラスのひしめくビジャレアルでの競争、その競争の中でも気負ったり臆することのない印象的なハイレベルなプレーの数々、など日常で身を投じている世界のレベルの高さとその中で見せている実績面においても現時点で既に他の日本人選手とは一線を画している。

これ以上日本代表の10番に相応しい選手はいない。

マーケット面

久保は今や日本で一番人気のサッカー選手だ。年齢も若いことから大人のサッカーファンだけでなく、同年代の高校生や、その下の子供たちにも絶大な人気を誇る。さらに、レアル・マドリードのブランドとバルセロナのブランドも付加されているスペシャルブランド、オンリーワンブランドの選手だ。

彼が10番をつけ、”10Kubo”の文字がサムライブルーのユニフォームに踊れば、多くのユニフォームが売れるであろうことは想像に難くない。コロナの影響で試合を開催できておらず、日本のライトファン層の目線も代表から離れつつある現状においては、これらの層の目線を取り戻す一つの起爆剤になり得、東京五輪やアジア最終予選、ワールドカップ本大会に向けて日本国内の盛り上がりと声援を取り返すことにつながるだろう。

また、入場料収入のなくなった日本サッカー協会においてはユニフォームの売り上げは大きな助けになるはずだ。商業的にもメリットしかないのではないだろうか。

このように久保建英に10月の欧州遠征から10番を託すことは日本サッカーにとってメリットしかないと考える。久保を大事に育てたい、プレッシャーに潰されないようにしたい、という森保監督・代表スタッフの気持ちも理解できるが、久保にこの手の心配は不要であると断言する。

2022カタールワールドカップに向けて重要な欧州遠征となることを期待したい。