久保建英マッチレポート U24日本代表VSU24アルゼンチン代表(2021.3.26国際親善試合)

久保建英マッチレポート U24日本代表VSU24アルゼンチン代表(2021.3.26国際親善試合)

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試合結果

0-1 アルゼンチン勝利

試合トピックス

7分 アルゼンチン、ガイチのクロスからバレンスエラがリフレクション気味のボールをシュート。バー直撃

18分 アルゼンチン、ウルシの縦パスに抜け出したバレンスエラがペナルティエリア内でシュート。バー直撃

21分 アルゼンチンGOAL>>バルガスのクロスからガイチがヘディングでゴール

61分 日本、久保が右サイドで得たFKを直接狙う。キーパーがセーブ

79分 日本、久保が左サイドを突破しグラウンダーのクロスを送るもキーパーがはじく

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久保・日本代表詳報

日本・アルゼンチン双方にとって良い強化試合となった。

アルゼンチンは明らかに五輪の開催国でのホスト国との対戦を有意義なものととらえ、本番をシミュレートしたテンションで臨んでいた。コンディションを整え、チーム・個どちらにおいても本番に近いインテンシティでゲームに入っていた。

日本は母国とあってアルゼンチンよりリラックスした状態ではあったが、それでも久しぶりに観客の入った五輪に向けた重要な試合と位置づけいつも通りの高い意識で試合に臨んでいる。

そうした本気度の高いチーム同士の戦いであったことが強化試合としてよいものとなる結果を生み出した。

アルゼンチンにとっては、本番でも想定されるシチュエーションで望む結果を出せたことが大きな自信となったことだろう。ただでさえ本番ではいつも以上に自国で力を発揮するホスト国に対し、1点リードの状況でホームスタジアムの後押しにより攻勢に出る相手にきっちり勝利できたのだから。コロナ禍でのスタジアムでの日本の観客の雰囲気や日本のチームについて知ることができたのも収穫に違いないだろう。

日本にとって良かった点は、チームの底上げにつながる試合内容であったことだ。

三苫を含め普段はJリーグでプレーする選手たちのパフォーマンスで説明するのがわかりやすい。彼らは明らかにアルゼンチンのインテンシティにとまどっていた。伸びてくる足、狡猾な身体の入れ方、ボールを奪い取れるあるいはゴールを目指せると感じたときの高い集中力。これらの前にミスが多く出ている。Jリーグでは経験できない試合のノリだ。

こうした経験はチームの底上げという観点から言うと日本にとって本番に向けて非常に良いプロセスとなった。

本番ではもっとテンションとインテンシティが高い。そこでとまどっていては大会が終わってしまう。ぜひ、この試合の経験を次の試合でも生かし、さらに意識を高めていってほしい。

とはいえ、戦術的観点からするとフル代表も含め日本の課題を克服できる目途はまたしても立たなかった。

この試合で日本は4-2-3-1で臨んでいるが、アルゼンチンの守備を慌てさせ決定的なチャンスをつくる回数は少なかった。

脅威を与えられたのは、この日トップ下をスタートポジションとして出場した久保が前を向いてボールを持ったときだけであった。サイドの数的優位による崩しはつくれず、1トップが能動的にボールに絡み意図的な攻撃を創出することもできなかった。ほぼショートカウンター頼みであったため、この日のようなレベルの相手だとそう簡単には攻撃の回数は増やせないということだ。

これでは勝ち点をとること、勝利によりトーナメントを勝ち抜いていくこと、は困難なミッションになってしまう。

さらに、そんなとき、戦術的アプローチで試合を少しでも好転させるのが監督の仕事なのだが、この試合でもこれまで同様その気配は見いだせなかった。

使ったベンチワークは同じポジションで同じ役割を果たす選手の交代だけである。フォーメーションやチームの重心を一切いじることなく、ただ交代カードを切っているだけなのである。

これでは交代で入ってきた選手のエネルギーに頼るだけでよほど偶発的なことがない限り何も状況に変化はもたらせない。

これは一重に監督の戦術的選択肢の少なさに尽きる。選手の駒の問題はあるにせよここまで何もアクションを起こせないとかなり問題と言わざるを得ない。

過去のいわゆる本番となる世界大会では日本は劣勢の状況でいきなり今まで一度もやったことのない戦い方、ベンチワークを強いられることが多い。最後はベンチと選手が混乱しながら闇雲にプレーし敗戦するという歴史を繰り返してきた。母国開催の五輪において今までと同じようなシーンは見たくない。

この問題に関するトレーニングという意味ではこの試合は最高のシチュエーションであった。しかしまたしても有効に活用しなかった。大いに反省してほしい。監督には試合中の勇気あるアクションを求めたい。現代サッカーでは監督もトレーニングが必要なのだ。

加えて、五輪でもトーナメントに上がってくるようなレベルのチームはそうしたものをベンチ・選手が豊富に持っているためどんなシチュエーションになっても混乱は起きない。日本はそうではないことを認め、この試合のようなシチュエーションで経験を積んでいくしかないということも申し添えておく。

さて、久保であるが、今季数少ないフル出場となった。ポジションはトップ下である。

トップ下らしく、右にも左にも顔を出し、トップを追い越す動きも見せている。得意のドリブルで仕掛ける場面、抜く場面もそれなりにつくれていた。今季出場時間が少ない影響かまだボールプレーでフィットしていない瞬間はあるものの、セットプレーもすべて担当しており、試合に対する影響度は高かった。浮上のきっかけとなるゲームとなったかもしれない。次の試合も期待したい。

それにしてもである。やはり日本代表にとって久保の存在は大きい。彼のプレーは日本で唯一アルゼンチンにすべての場面で敬意と脅威を抱かせていた。つまり能動的な優位性を保っていた。

本番仕様のクオリティのチームを相手にした中でのこの事実は日本にとって明るい材料だ。わかってはいたことだが本番が近づく中改めてすべての人間が久保の重要性を再認識できたことは東京五輪に臨むチームを構築するにあたって大きな収穫だろう。

ただ久保を追っている人間からするとまだまだ物足りないという感想を持つことも事実だ。彼ならボールを持てばスイスイ抜いていける、あるいはシュートチャンスを創出できるという場面が常に想像できてしまうため、見る側、期待する側のハードルが上がっていることも事実だが、やはりショッツオンゴール(枠内シュート)の回数はもう少し増やしたい。

これは単純に日本の勝利のために必要なことでもあるが、それ以上の効果もある。それは、彼が相手のゴールを脅かすたび日本中のテンションが高まり、それを後押しに日本がゴールチャンスを創出できるようになり、そしてゴールが生まれるというものだ。

東京五輪本大会ではそれがより顕著になるであろうことは想像に難くない。ましてや久保がゴールを決め日本が勝利すれば、五輪に注がれる様々な視線を吹き飛ばし日本中のエクスタシーとカタルシスの瞬間となる。

期待したい。

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