久保建英のビジャレアルでの2020-2021シーズンを展望する

久保建英のビジャレアルでの2020-2021シーズンを展望する

いよいよ2020-2021シーズンのラ・リーガの開幕が今週末に迫ってきた。久保建英はレアル・マドリーから1年間の期限付き移籍でビジャレアルで今季を戦う。

昨季よりステップアップしたチームで戦う今季の久保を様々な角度から期待とともに展望したい。

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今季の目標は、ずばりシーズン10ゴール10アシストだ。

最高目標として求めたいのは、リーグ10ゴール10アシスト+EL3ゴール3アシストだ。

今季の数字的な目標については、本人は昨季以上、そして一部報道によればレアル・マドリーサイドではアシストが昨季の倍、つまり4ゴール8アシストと見定めているようだ。来季のマドリー復帰はEU圏外枠を久保に用意しているという報道もかなりあり、既定路線として見ることもできるが、実力や成長曲線を見せられなければ絵に描いた餅だ。となれば、これらの数字が来季のマドリー復帰のラインということになるだろう。

しかし、この数字では、ビジャレアルのチーム力及び来季マドリーに復帰した際にレギュラークラスとして扱われるためには少し物足りないのも事実だ。マジョルカ移籍前にもこちらに記事を掲載したが、年間二桁ゴール二桁アシストのインパクトは求めたいところだ。

そして、数字の積み上げと同様に大事なのはその内容だ。まず、リーグでは昨季同様マドリー・バルサ・アトレティコ、そしてチームのCL圏内(リーグ4位)を争う直接的なライバル(セビージャなど)との直接対決での決定的な仕事を期待したい。さらに、今季はなんといってもELという欧州の舞台に登場する。このコンペティションでもチームを勝ち上がらせる決定的な仕事を期待したい。目標はタイトルだ。ファイナルで久保のプレーする姿、ゴールする姿を見たいものである。

目標達成に必要なのは出場時間数を増やすこと。出場時間数を増やすには左サイドの攻撃的MFとして確固たる地位を確保することからだ。

まず、当然ながら、スコアを積み上げるには多くの試合に出ることが必要だ。そこで、プレシーズンマッチなどから今季の試合の出場時間数について展望したい。

監督のエメリが直接電話で久保を口説いたのは有名な話であるが、プレシーズンマッチの出場時間数を見てもレギュラークラスであることは間違いない。カソルラといった昨季までの主力の抜けたチームにあって非常に重要な戦力として見られていることも確かだろう。

一方チームのスカッドと採用するフォーメーションを考えると、マジョルカ時代のように(ほとんど)一つのポジションでずっと出続けるという状況は考えづらいのは確かだ。というのも、チームの採用するフォーメーションは主に二つで、一つは4-2-3-1、もう一つは4-4-2であり、このフォーメーション上でエメリが考える久保のポジションは攻撃的MFとして中央(トップ下・セカンドトップ)・左サイド・右サイドだからだ。

陣容も豊富で、右にはナイジェリア代表チュクエゼ、中央にはスペイン代表モレノ、トップにはバルサ在籍経験もあるパコ・アルカセルという才能ある実力者が揃っている。

そのため、国内リーグだけでなくELも戦うチームとしては代表活動やその時々の各個のコンディション、対戦相手の特徴などを考慮して、パコ・アルカセル、モレノ、チュクエゼ、久保をうまくローテーションしながら使うことが想定されるからだ。(パコはトップのみ、チュクエゼは右のみが選択肢と考えられるが、モレノはトップ・セカンドトップ・トップ下が選択肢で久保は上述の通り。)

さて、そうした中で久保が出場時間数を伸ばすにはどうしたらいいのかであるが、これは答えは明確である。左サイドで確固たる地位を築くことである。

プレシーズンを見る限りエメリもチームメイトも久保の適性を理解しながら、チームとしての最強の布陣の構築を望んでいることがうかがい知れる。それはトップにパコ・アルカセル、セカンドトップかトップ下にモレノ、右サイドにチュクエゼ、左サイドに久保、を配置することである。

カソルラの抜けた穴に久保をはめることで強力な攻撃をチームとして構築したいということであろう。このチームとしての要求を久保が満たすことができればチームからの信頼度もグンと跳ね上がり、エースとしての地位を築くことすらできる可能性がある。

そうすれば左以外のポジションで使われた際もよりボールが集まり、より能力を発揮できるようになるし、実績も積み上がっていくという好循環のサイクルに身を投じることができるはずだからだ。

これまでの日本人選手はポジションが代わると適性を発揮できなくなったり、与えられるタスクに精神的に戸惑ったりするケースがほとんどだったが、久保にそれは当てはまらない。サッカーIQも高くどのポジションでも戦術的要求を満たしつつ自身の特長を見失わず発揮できることは既に昨季証明している。

またマドリーでの活躍を見据えれば、左サイドでもクオリティを最大限発揮できるようになれることは重要だ。世界最高クラブでは自分の適性に見合ったポジションを用意してくれるのはメッシ、C・ロナウドクラス以外あり得ないからだ。

今季期待したいプレーは、トップ下での10番プレー、左サイドでの崩し、そしてフィニッシュだ。

続いて、どのようなプレーをすべきかも展望したい。

今季は久保自身も認める最も得意とするポジションであるトップ下での出場機会も増えそうだ。ここで見たいのは、やはり中途半端なポジション(相手のギャップスペース)でボールを受け一瞬で相手を混乱に陥れるマジカルなプレーだ。

ドリブル、ワンツー、スルーパス、シュートと持っている才能を存分に見せて欲しい。昨季のマジョルカやJリーグ、日本代表ではほとんど周りが感じてくれていなかったが、ビジャレアルではバルサ経験者のパコ・アルカセルやスペイン代表のモレノなどハイセンスなプレーヤーが近くにいることが増えるだろう。彼らとの連携で崩す姿はぜひ見たいものである。世界中に驚きを与えるプレーを見せてくれることを期待してやまない。

そして、もう一つは、上述の通り左サイドで確固たる地位を築くための崩しのプレーだ。右サイドで左利きであることを武器に縦、中央に入っていくドリブルを軸としたプレーは既にワールドクラスであることを昨季証明しているが、左サイドでも同レベルのプレーを期待したい。

プレーアングルが変わるため簡単ではないが、ドリブルでの崩しは右サイドと変わらないクオリティを見せて欲しい。左足は相手チームにかなり研究されているが、久保の一瞬で相手の不利な位置にボールを置く能力と細かいタッチ、それに伴うリズムチェンジはポジション関係なく天賦の才のそれである。

左サイドでは基本的に縦突破に左足を使用することになり直接的なフィニッシュに結びつけることは右サイドより難しくなると考えがちだが、左サイドバックとの連携や中央の選手との連携で左足でフィニッシュに結びつける角度を取ることは可能だ。

また、それにより半歩分のスペースが空けば、ダブルタッチなどで相手ディフェンスを引き裂くこともできる。アーリークロスの精度を向上させ、相手にクロスを脅威と思わせることで半歩分スペースを余計にあけさせることもドリブル突破するうえで有効だろう。期待したい。

なお、カソルラが時折やっていたように神出鬼没感を高めることも重要であろう。オフザボールのときは流動的なポジションにいながらチームの攻撃のスイッチが入ったときに左サイドに突然現れプレーの選択肢の多い状態でボールを受けるのである。

最後はフィニッシュだ。昨季の課題であると認識している人は久保本人も含め多いかもしれないが、課題であるとは思わない。

変に課題意識・苦手意識は持つべきではないと考える。昨季の久保は課題意識が強くそれが精度に影響していたように思うからだ。恐らく、Jリーグ時代ではあり得ないGKの体格と守備範囲、反応速度にゴールが狭く感じたのだろう。だからフィニッシュが力んでいた節があるし、強引にフィニッシュにいっても問題ないところでもパスを選択することが時折あったように見えた(判断は間違いではないが)。

久保のコンパクトな振りとインパクトの強さ、そしてコース判断は既に世界最高リーグで実績を積み上げられるだけのレベルに到達している。あとはGKを意識しすぎず他のプレー同様常に自分のほうが優れているという気持ちで冷静になることだ。

ビジャレアルは攻撃能力の高いチームだ。マジョルカ時代に比べフィニッシュの機会は間違いなく増えるであろうし、チーム全体が久保をトップ下のテクニカルな選手として見ている点からすれば、セットプレーのキッカーになることが増えてくることも想像できる。多くのフィニッシュシーンが生み出され、それがゴールにつながることを期待している。

コミュニケーションなどピッチ外の能力に関しては既に日本サッカー史上最高の選手であり全く不安はない。実際に各国の代表クラスの多いビジャレアルにあっても戦力としてのリスペクトを既に受けていることはプレシーズンの映像などを見ても明らかである。

脆弱さや内向さに対する不安のある判官びいき的精神での海外の日本人選手を応援する視点ではなく、ワールドクラスの頂点を狙う初めての日本人選手としての視点で追っていくべき選手であり、その視点でこの記事を書いている。

久保の2020-2021シーズンの冒険を大いなる期待をもって追っていきたい。

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