久保建英から薫る”世界的な本物感”

久保建英から薫る”世界的な本物感”

2019年に17歳で代表デビューを果たし、直後に世界最高クラブの一つであるレアル・マドリードへの移籍を経て、欧州トップリーグであるスペインのラ・リーガにて欧州デビューを果たした久保建英。

プレークオリティや戦術理解度、パーソナリティの発揮による自己表現力、加えて、描いているキャリアビジョンには日本人では初めての”世界的な本物感”を感じずにはいられない。

これまでの日本人選手にも素晴らしい才能はいた。プレースピード・強度を世界基準へと昇華し結果を出す術を見出した中田英寿、左足のキック精度に加え、華麗なテクニックとアイデアで世界に印象を残す中村俊輔、繊細なボールタッチと自在のキックでピッチを支配した小野伸二。見る者をワクワクさせる彼らの輝きは特別なものである。

そんな彼らと比較しても一線を画するくらい本物感を漂わせているのが久保建英である。

ここではその久保について、なぜ”世界的な本物感”が漂っているのかを解説したいと思う。

Advertisement

プレークオリティ

まずは、マジョルカでも強烈な印象を残したドリブルである。これはまず最初のタッチでのボールの置き所が抜群。自分の視界が広く保たれ、相手選手の視界が限られる位置に瞬時にボールを置くことのできるこの能力は、イニエスタやメッシ、シャビと同種のものである。そうした有利な状況から、さらに切り返しやコースを変えるときには普通の選手なら1タッチで進むところを2タッチ入れて進む。そして状況に応じダブルタッチも駆使する。これでは相対するDFはファールでしか対応できない。選ばれた選手にしかできない所業である。

次に、プレービジョンである。俯瞰での視点を持っているだけでなく、ピッチ内の状況を論理的に把握し、それを瞬時に戦術的に解釈したうえで適切な判断のもとプレーを選択することができている。これも選ばれた選手しかできないものである。

シュートやパスも高いレベルのものを持ち合わせているが、それ以上にこれらについては特筆すべきものであり、この点については既に世界トップクラスと断言できる。ボールタッチ、置き所、プレービジョンはプレースピードやフィジカル能力の影響度の増す現代サッカーにおいて常にピッチ内で「違い」を生み出せる重要な要素である。つまり、ワールドクラスの選手に必要な要素を高いレベルで既に満たしているのである。

戦術理解度

マジョルカでは当初は未体験ゾーンとなる守備重視のタスクに苦労していたが、シーズン中に適応して見せている。この適応というのは監督に言われるまま、守備に奔走するのではなく、自身の強みや特長を一切スポイルせず、チームの戦術やコンセプトを自身のプレースタイルに落とし込んで、うまく融合させることである。これが本当の意味での適応である。ワールドクラスの選手には必要最低限の能力であるが、日本人選手にはこれまで一人も実践できた人間はいない。久保はそれを欧州デビューの年に、しかもシーズン中にやってのけているのである。

また、試合中あるいは試合ごとに変更されるポジションやタスクについても難なく適応して見せている。マジョルカでは右ウイング、左ウイング、トップ下、マドリーのプレシーズンではトップ下、偽9番、セントラルMFをこなしている。勿論試合の流れや本人の得手不得手により出来不出来はあるが、戦術的な破綻やマイナスはチームに一度ももたらしていない。

パーソナリティの発揮と自己表現力

スペイン語や英語を話せるのが大きいのは事実だろうが、それだけではない。むしろそれ以上にピッチ内外で自己表現を正確にしていると感じる。記者の質問に対する回答の仕方、バルサやマドリー、アトレティコ相手に臆さないプレー、チーム内でのコミュニケーションの取り方、審判や相手選手とのやりとり、どこをとっても脆弱さが一切感じられない。

これまでの日本人選手を見てると、新しいチームに移籍するとどこかで「大丈夫かな?コミュニケーション取れるかな?馴染めるかな?」と心配してしまう心理が働いていたが久保には一切それを感じない。仮に今南野が苦労しているリヴァプールに久保が行ったとしてもこうした面での不安は一切感じないだろう。

こうした要素は世界的に活躍するための必要最低条件であるが、久保はそれを高いレベルで既に満たしている。

描いているキャリアビジョン

久保の、強い信念のもと、高いキャリアビジョンを持ち、そこからバックキャストして戦略的に成長している姿はこれまでの日本人では見られなかったものである。

表に出している目標は、「CLのファイナルでプレーすること」「レアル・マドリードで活躍すること」だが、彼の意識の高さを感じるに、バロンドールも視野に入れていることだろう。

この目標設定の高さは特筆すべきことである。中田・中村・小野は日本最高の才能ではあったが、日本サッカーの世界での経験値が今よりも低かった中で、あくまで”日本から出て世界で通用する”選手となることが目線であった。それから約20年の時を経て久保建英がこうしたレベルを遥かに超える視点を日本に持ち込んだのである。

そして、さらに素晴らしいのは、その高い目標に向かって、強みを伸ばし、弱みをなくす、という視点を両立させて成長を見せている点である。とかく日本社会は弱みをなくす指導に力点が置かれ強みが伸びないのが弱点と言われることもあるが、久保はそうした一元的なとらえ方を排除しているのである。

例えば、右足を使い実際にゴールを決めるようにもなったが、これは「左足しか使えないと消される」という視点ではなく「右足を使えれば左足も使えるようになる」という視点で見ているし、スプリント回数や走力アップも「ないと監督に使ってもらえない」という視点ではなく「増やすことによって得点力を伸ばせる」という視点でとらえているのがうかがえるのだ。動機付けが自身の中で明確なため納得感を持ってトレーニングに取り組めているからこそ伸びる度合も大きいのだろうと推察できる。

こうした理由から、久保建英から”世界的な本物感”が薫ってくるのである。