エヴァンゲリオンの全て(人類補完計画など)をわかりやすく解説する

1995年にテレビシリーズが放映されて以降、様々な社会現象を引き起こしながら日本中に大きな広がりを見せたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン(エヴァ)」。

ここでは、そんな「エヴァンゲリオン」のテレビシリーズからいわゆる旧劇場版にかけてのあらすじや謎、その他社会現象などの周辺情報について、そのすべてをわかりやすく解説したいと思います。

「ストーリーや内容などについて忘れてしまったから思い出したい」「謎や解釈についておさらいしたい」「新劇場版から入ったのでテレビアニメからの流れを知りたい」「名前だけは聞いたことあるのでこの機会にざっくり知りたい」「よく知らないけど興味はある。そもそもどうしてこんなに有名なのか知りたい」といった要望すべてにお応えしたいと思います。

なお、難しい表現やロジックが一つの売りとなっているアニメ作品ではありますが、ここではなるべくわかりやすく解説したいと思います。

非常に面白く、のめりこめる高質で優れた日本アニメ史に残る傑作です。

ぜひ、ご覧ください。

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エヴァンゲリオンの概要

作品の流れ

1995年のテレビシリーズに始まり、1997年の劇場版で完結するという流れになっている。

【1995年10月~1996年3月】テレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」放映(全26話)

【1997年3月】映画「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生」上映

【1997年7月】映画「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを君に」上映

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企画・原案・脚本・監督・総指揮

庵野秀明氏

(※製作会社や出資会社との共同著作だが、果たしている役割から実質的に氏のオリジナル作品である)

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主制作会社

GAINAX(ガイナックス)

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社会現象

テレビ放映前からGAINAXと庵野秀明という名前は、いわゆるオタクやアニメファンの間では知られていた。それは1990年にNHKで放送された大人気テレビアニメ「ふしぎの海のナディア」を制作したアニメ制作会社と監督だったからである。ナディアで技術・演出などすべての面で優れたクオリティを見せ脚光を浴びていたのだ。

そのスタッフが届けるオリジナルSFロボットアニメの放映とあって一部では既に大きな期待が高まっていた。そうした中放映された第1話で期待に違わないクオリティを見せつけアニメファンたちの間で一気に人気に火が付く。

そして、テレビでのオンエアが続く過程で、その人気がどんどん膨らんでいくことになる。生粋のアニメファンやオタクだけでなく、そうした人たちが周囲の友達や知り合いへの布教活動を通じて潜在的なアニメファンやオタクも呼び起こしていったのだ。当時はインターネットは黎明期で携帯どころか家庭でPCも普及していなかった時代であった。そうした時代にあってこの広がりは、この作品の魅力を純粋に表していると言っていいだろう。

そうして話数を追うごとに人気が膨れ上がっていく中迎えた最終2話。ここで日本アニメ史上未だ誰もしたことのない内容を放映する。それは動画をほぼ放棄し、静止画メインで主要キャラクターの内面のみに迫りエンディングを迎えるというものであった。

これが広く一般社会にも大きな話題を呼ぶことになる。実態は制作が追い付かなかっという理由によるものだったが、前代未聞の宗教的な絵面(※1995年に起きた地下鉄サリン事件のイメージが抜けていない時期でもあった)により、作品内の謎やストーリー的な帰結は一切明かされず主人公が自身の葛藤を肯定して他のキャラクターから拍手を浴びて終わるだけという困惑のエンディングである。

この出来事をきっかけに一人気アニメ作品という枠を飛び越えて様々なメディアで話題になっていく。テレビ、新聞、芸術誌、カルチャー雑誌、オカルト雑誌、SF雑誌、論考誌といった様々なところで大衆が「エヴァンゲリオン」「庵野秀明」という文字を目にするようになっていく。

オタクやファンの間でも作品内の謎を解き明かす欲求が高まり、キャラや世界観への愛着と相まって作品への熱中度が上昇していく。いわゆる解釈本や論考本も多数出版され、公式が出版する書籍より多く書店に陳列されている状況も生まれる。

いわゆる二次創作も熱中度の上昇とともに大きく膨らみ、同人誌やインターネット内でのファンサイトにショートストーリーや絵が多く登場するようになる。キャラ同士のカップリングなども様々なものが出てきてオタクの熱い世界を大きくしていった。

その他にも、主題歌CDや関連CDがアニメ史上前代未聞の売上となり、中の人と呼ばれる声優陣にも世間の注目が集まっていく。今では声優という仕事は一般的になったが当時はそうではなかった。声優の社会的知名度を向上させた作品でもあるだろう。

アニメ誌や声優雑誌、ゲーム雑誌等もエヴァンゲリオン関係の特集をこぞってするようになり売上を急速に拡大させていった。

グッズ展開等も拡大の一途を辿る。アニメショップは増え、ゲームセンターでもエヴァンゲリオン関係の景品が多く並ぶようになる。

そして最も影響の中心となったアニメ関連業界の市場も急速に膨らんでいく。エヴァンゲリオンで成功したテレビ東京は遂に史上初の深夜枠でのアニメ放映を決め、週に数十本のアニメを放映していく。テレ東での成功を見て他のテレビ局も追随。夜中にテレビをつければ必ずどこかで深夜アニメがやっているという日々になっていく。

ラジオ番組も声優番組が一気に増え、アニメ情報に特化した番組も増えていった。

今でこそ珍しくないが、アニメと企業のタイアップ文化もエヴァンゲリオンきっかけだ。水道局とのタイアップではオリジナルのポスターがつくられたり、Jリーグの試合では限定テレホンカードも販売されたりした。作中で登場した缶コーヒーのUCCなどとのタイアップも実現。限定商品がコンビニなどで並んだ。

このようにテレビ放映終了直後から、多くの市場を大きくしていくこととなった。これはテレビ終了後映画で本当のラストを公開するという流れになったことが大きな要因だろう。

テレビ終了から映画公開までの1年間という期間はこの熱量を破裂寸前まで膨らせるのに最適な時間となったからだ。

そうした中、「シト新生」の上映が近づく。前売り券発売日には深夜待機組、始発組が大挙して各映画館に押し寄せ、長蛇の列ができ、各局のニュースでも取り上げられた。(ちなみにこのときの前売り券は日本映画史上最も売れたと言われている。限定テレホンカードをつけたことが大きな理由の一つだ。前売り券に限定商品(コレクターアイテム)をつけるという手法は筆者が知る限りエヴァンゲリオンからである)

「シト新生」の上映でもしばらく長蛇の列が全国で見られる。だが、当初はこの映画で完結する予定であったがまたしても制作が間に合わず、テレビシリーズの総集編と一部新作が公開されるだけとなった。

その結果次の「Air/まごころを君に」までファンは完結を待たされることになり、破裂寸前だった熱量が遂に破裂し始める。匿名掲示板では庵野氏やガイナックスに対する罵詈雑言が並んだ(今では誹謗中傷や脅迫罪として問題になる書き込みもあった)。

そして「シト新生」から約半年後完結編の「Air/まごころを君に」が遂に上映される。アニメーション作品としての完結を見るが、実写映像を交えたり、ラストのヒロインのセリフの衝撃など話題には事欠かなかった。

この完結編も大きな話題を集める。様々なところで論考や感想、意見が語られ、プロの漫画家やライトノベル作家、アニメーターなども自身の作品の巻末等で意見を述べるに至る。

エヴァンゲリオンへの対抗心や反発心、共感、など業界内でも愛憎渦巻く作品となり、その情熱が以降のコンテンツに強く反映されるようになる。エヴァンゲリオン以降しばらくあらゆるエンタメコンテンツにおいて、作り手のクリエイターやアーティストとしての強い思いがその作品のテーマとして反映されるようになり、魅力的なコンテンツが増えていく。(テーマ性の強い作品は好き嫌いも生まれるが総じて熱量があるため質が高く魅力的な作品が多いと思うのは筆者だけではないだろう)

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エヴァンゲリオンの魅力

SFロボットアニメとしてのロマン

エヴァンゲリオンの搭乗、発進、操縦ともに細かい設定があることが表現されている。

各部品の動きがリアルに細かく描かれているだけでなく、それが別に専門家でなくてもわかりやすく表現されている点は、男心をくすぐる。歯車が回るシーンなど単純で機械的な動きが随所に描写されており、これが世界観にのめりこめる理由の一つとなっている。

動く理屈は、ガンダムのように”なんとなくな”機械仕掛けとは違い、人体とのシンクロ(神経接続)という設定にしており、フィクションに不思議なリアリティをもたせている。秀逸な設定である。

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緻密な設定

すべての面で緻密な設定が施されている。

ストーリー、ロボット、キャラ、キャラ同士の相関、使徒と呼ばれる敵、主人公の属する組織やその周りの組織、学校や町などの舞台など、作品のあらゆる細部に具体的な設定が存在する。

そして、その設定について、明かされるものと最後まで明かされないものがある点もエヴァンゲリオンの面白さになっている。(作品の細部まで知りたいという欲求(いわゆるオタク心)をくすぐっているとも言える。)

さらに物語世界の中だけでなく、その周辺、つまりオープニング曲やエンディング曲、サブタイトルなどにおいても緻密な設定が存在する。

例えば、オープニングやエンディングで流れる絵や歌詞についてもエヴァンゲリオンという作品世界の謎に迫るものとなっていたり、サブタイトルについても二つの意味があったり謎に迫る内容が隠されていたりする。

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リアルなキャラクター

年齢を明確にしたキャラクターが多く出てくることが一つ。例えばエヴァに乗る主人公は14歳という年齢が明確になっており、そこに意味を持たせている。

セリフや表情もいわゆる一般的なアニメのようにデフォルメされた演技やデザインによるものではなく、かなりリアルなトーンとなっている。

デザインはどこか無機質で普通。演技も過剰なトーンでの表現は控えめである。(これは庵野氏の指示であるとのことだ)

性格についても、妙に生々しい。正義のために燃えて頑張るといったような感情表現豊かな、いわゆるアニメ的なキャラクターは不在で、どこか皆他人との距離を測っていたり、自身の内に閉じこもる瞬間があったり、外面と本音を使い分けていたりする。

主人公が作中で最も内向的な性格であることはその象徴だろう。

また、それぞれの立場や役割の違いから性格に違いがあるように見えるが、根っこの部分では似ているキャラばかりと言える。どこか強迫観念的で、ネガティブである。これは庵野氏に内在する精神性が全キャラに反映されているからだとする説が有名である。

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多くの謎

聖書や神話に関連した用語や心理学に関連した用語が多々出てくる。

すべてがストーリーに直結する使われ方をしており、謎が謎を呼ぶ展開を創出している。

それだけでも面白いがエヴァンゲリオンがさらに面白いのはその用語が聖書や神話にある通りのそのままの意味で使われていない点である。

庵野氏はエヴァンゲリオンの企画前に多くの聖書や神話などを読んだそうだが、そこから着想を得た彼の頭の中にある緻密なオリジナル設定を必要のある範囲で作品中で披露しているだけなのだろう。

また、それだけでなく、キャラによっても認識や理解が違っていたりする点も謎が謎を呼ぶ展開となっている理由だ。正答が恐らく明かされた謎もあれば、最後まで正答かわからないままの謎もある。そして、二度と明かされることはないであろうが正答だと思われた謎も実は庵野氏にしてみれば違うというものもあると思われる。

こうした多くの複雑に絡み合った謎が充満している点がエヴァンゲリオンという作品の魅力の一つである。

謎の答えを知りたいと思う欲求は、作品に熱中すればするほど出てくるのは当たり前で、そうした視聴者心理やオタク心理への仕掛けという意味でも非常に魅力的な仕上がりになっている。

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ハイクオリティな技術・演出

エヴァンゲリオンは、単純にアニメーションとしての技術が高品質である点も魅力だ。

キャラクターやエヴァンゲリオン、敵である使徒などの動きもそうだが、その他にもバトルシーンでの武装の細かいアニメーションもすべからくレベルが高い。

庵野氏は監督してだけでなくアニメーターとしての腕も超一流であることが知られているが(※「風の谷のナウシカの巨神兵のシーンは若かりし庵野氏がひとりで描き、宮崎駿監督に一目置かせたことでも有名)、その彼が率いる製作集団であるガイナックスのエヴァンゲリオンスタッフは非常にスキルが高いことが伝わってくる。

また、当時の最先端技術も駆使していた。

例えば、テレビ放映当時はセル画の時代であるが、その中に今でも見劣りしない電子的な画像が多く出てきたりする。また、作品内とは少し違うが「Air/まごころを君に」のスタッフロールは実に美麗で見事であった。今でもアニメ史上最高のスタッフロールであると断言する。

そして技術面だけでなく演出面も素晴らしい。

主人公が自問自答するシーンを深層心理の電車の中で行ったり、線が走る映像(線画)を加えることで気づきや精神的なゆらぎを表現したりしている。このような表現技法を用いたのは後にも先にもエヴァンゲリオンだけである。

象徴的なこうしたシーン以外にもキャラの内面を掘り下げる演出は実に見事である。技術面での専門的なことはわからなくても他のアニメ作品とは一線を画すクオリティがあることだけは感じ取れる。(演出スタッフには、アニメ業界では当時有名だったあるいは後に有名になる新進気鋭の鬼才ばかりが名を連ねていたのだからなるほどと頷ける。)

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アニメ作品の常識を覆す斬新な仕掛け

作品周辺での仕掛けについても他のアニメ作品にはないものが多く、それがエヴァンゲリオンの魅力に繋がっていることも確かである。

以下は主なものである。

・テレビのオープニング曲に「監督・庵野秀明」という名前が通常スタッフテロップではなく原画として入っている。(恐らくエヴァンゲリオンという作品そのものが庵野秀明自身であるという意思表示なのだろう。他の作品では目にしたことがないものだ。)

・エンディング曲は同じ曲でありながら毎話歌い手が変わったりインストゥルメンタルになったりしている。(これもエヴァンゲリオンが初めてだった。)

・テレビ版25・26話は、ほぼ動画を放棄し、静止画でキャラクターの内面に迫るだけの物語を展開している。(恐らくこうした内容のものを放映するのはエヴァンゲリオンが最初で最後だろう。)

・「Air/まごころを君に」では実写映像を挿入し、声優陣やAV女優もそこに登場している。

・BGM等に既存のクラシック曲を用いている。(アニメ作品では当時エヴァンゲリオンが初めてであった。)

これらは、すべて、庵野秀明がエヴァンゲリオンという作品で言いたいことを表現するために可能な限り適した手段をとった結果ということかもしれないが、作品を彩る魅力であることは間違いない。

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濃厚なテーマ性

これもエヴァンゲリオンを語るうえで欠かせない魅力だ。

様々な謎や仕掛けがあるが、それらをつらつらと見せ、視聴者にただただ楽しい時間を提供しているわけではないのがエヴァンゲリオンである。

大枠は主人公の成長物語であるが、ほとんど目に見える成長をしない。一歩進んで二歩下がるを繰り返している印象だ。「Air/まごころを君に」の中で「自己嫌悪とぬか喜びを繰り返しているだけ。それでも前に進めた気がする」というセリフがあるが、まさにそういうことなのだろう。

また、主人公の自我の確立、アイデンティティの確立が物語のゴールのように表現されている。

自分とはなんだ、他人とはなんだ、他人の存在は自分にとってなんだ、という自分の存在意義を確認するためだけにすべてを費やしているという見方が可能なストーリーとなっている。

こうしたテーマに対する感じ方は人によって違うだろう。

「この世に生を受けた時から自我なんて当たり前にあるんだから何を言ってるんだこいつは」と思う人もいれば「一生をかけて追及していく人生そのものだ」と思う人もいるだろうし、「14歳くらいの思春期はそんなこと考えてたなあ。過ぎ去った過去だけど」と思う人もいるのではないだろうか。

そしてそう思う中で、自分を見ているような恥ずかしい気持ちになる人もいるかもしれないし、主人公の行動に苛立ちや不満を覚える人もいるかもしれない。

つまり、こうしたテーマを作品の根幹に置くことによって、様々な思考を視聴者に投げかけているのがエヴァンゲリオンなのである。

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エヴァンゲリオンのあらすじ

2000年にセカンドインパクトと呼ばれる地球規模の大災害が起こった後の2015年の世界が舞台。

母は亡く父と離れて暮らしていた14歳の少年碇シンジは父ゲンドウに自身がトップを務める組織ネルフのある第3新東京市に呼び出される。

そこで汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンに搭乗させられ、使徒と呼ばれる化け物を敵として戦うことになる。

シンジは使徒と戦いながら、同じエヴァパイロットの綾波レイや惣流・アスカ・ラングレー、上官の葛城ミサトら周囲の人間との関係を構築していき、その中で自身の存在意義などについて自問自答を繰り返す。

一方、ゲンドウは群体としての人間を単体へと人工進化させる”人類補完計画”という自身の目的に邁進する。

最終的にゲンドウの目的である人類補完計画のトリガーとなったシンジは人類を滅ぼすが、自我を取り戻し、アスカとともに生き残る。

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エヴァンゲリオンの主要キャラクター

ここでは、常に物語の中心にいる4人の主要キャラクターを紹介する。

碇シンジ

主人公。14歳の少年。エヴァンゲリオン初号機のパイロット(3人目の適格者(サードチルドレン))。

父はネルフの総司令碇ゲンドウ。亡き母は碇ユイ。性格は内向的。強迫観念的・内罰的な思考を持つが、心根は優しい普通の少年でもある。料理が上手。

第3新東京市に来てからは上官の女性である葛城ミサト、同じエヴァパイロットで同級生の少女である惣流・アスカ・ラングレーとともに暮らす。

最終的に自己否定を繰り返し、人類補完計画を発動させ、人類を滅ぼしてしまうも、自身の存在を確認し肯定することに成功。アスカとともに生き残る。

ちなみに、アスカには異性としての女を求め、レイとミサトには母としての女を求めていることが随所で表現されている。

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惣流・アスカ・ラングレー

ヒロイン。14歳の少女。エヴァンゲリオン弐号機のパイロット(2人目の適格者(セカンドチルドレン))。

ドイツ人と日本人のクオーター。14歳にして既に飛び級で大学卒業済みの天才でもある。実母は自殺で亡くなっており、ドイツに残る父とその再婚相手の母という家族構成。性格は勝気でわがまま(いわゆるツンデレ)。

実母に人形扱いされ最終的に自殺を目撃するというトラウマを持ち、強気な性格とは真逆の心の脆弱さを持つ。

シンジに異性としての好意を持っているが、それを最後までうまく表現できていない。シンジにとっての異性である自覚はあるが、それはあくまでシンジが自己認識をするための相対的な存在でしかないという意味であると考えている。最後にシンジとともに生き残ったがその理由も同様に考えている。実母に人形扱いされたトラウマと重なり、ラストでもシンジに拒絶的な言葉を放っている。

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綾波レイ

14歳の少女。エヴァンゲリオン零号機のパイロット(1人目の適格者(ファーストチルドレン))。

シンジの母ユイのクローンであるが、性格は似ても似つかない。その生まれから人との接触を極端に避け、感情や言葉も必要最小限のものしか表現できない。

時折、シンジに対し母らしい側面を見せるが、魂は別のところから宿っている。ネルフの地下施設に保存されている第2使徒リリスの魂だと考えられる。

作中では、2人死に、3人目まで登場する。最後はリリスの身体との融合を果たし、シンジの思いに従い人類補完計画を発動させる。

当時それまでのアニメにはいなかった斬新な無口キャラであった。この綾波レイ以降無口キャラやクーデレキャラ、ヤンデレキャラ、物語の謎やテーマそのものを担うどこか神秘的なヒロインキャラが多く生まれた。

また、アスカタイプ、綾波タイプのダブルヒロイン制も以降のアニメ作品の定番となっていった。

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葛城ミサト

29歳。女性。ネルフの作戦課長。階級は一尉で登場し、作中で三佐になる。

ビール好きで家事は大の苦手。父は科学者だがセカンドインパクトで亡くなっている。母については言及されていない。セカンドインパクト時父に守られ生き残るもその様を目撃し失語症になった経験がある。

加持リョウジとは大学時代に恋人関係にあった。作中で再び恋人関係に戻るが死別し、ミサト自身も最後はシンジを守り死ぬ。

作品内では最もアクティブな進行役を担っている。視聴者に近い情報量で謎に迫り、シンジたちに対し前向きなアクションを起こしている。

前髪はセーラームーンの月野うさぎデザインだが全体的には峰不二子的な雰囲気をまとうお姉さんキャラ。ガイナックスで言えばナディアで登場したエレクトラの系譜のキャラと言い換えてもいいかもしれない。

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エヴァンゲリオンの主な謎と解と考察を解説(人類補完計画とは?)

庵野氏が墓場まで持っていくものが大半であると思われるため、100%の正解は永遠にわからないかもしれないが、ここまで明かされたことやそれに基づく考察をわかりやすくまとめてみる。

多くの謎がある作品であるが、すべての主要な謎は「人類補完計画」に帰結するので、その解や考察についてわかりやすく解説する。

人類補完計画の計画目的

群体として行き詰った人類を単体に人工進化させる計画(=魂の融合=人類の補完)

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人類補完計画の計画目標

作中で語られている具体的な計画目標は以下の二つ。

①すべてを無に帰す

⇒そもそもの計画立案組織である秘密結社「ゼーレ」の計画目標。人類の自らの手(人類がつくったエヴァ)によりサードインパクトを起こすこと。”滅びは新生の喜び”。

②エヴァ初号機の中での魂の融合

⇒当初はゼーレと同じ志だったゲンドウが途中から企図することになった計画目標。ゲンドウの妻でありシンジの母であるユイがエヴァ初号機の起動実験中に取り込まれたことをきっかけにエヴァ初号機の中でのユイとの再会を目指すようになった。

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人類補完計画の計画内容

計画目標に合わせ作中では大きく三つの計画内容が語られている。

ただし最終的にはシンジとアスカがヒトのかたちのまま生き残ったためどれも完全には成就していない。

①リリスとエヴァシリーズによるサードインパクト

⇒ゼーレとゲンドウが当初想定していた計画内容。リリスにロンギヌスの槍を刺し不完全体(ヒトのかたちを維持)にしておき、そのリリスによりサードインパクトを起こすというもの。(なお完全体とはヒトのかたちを維持できない何か(羊水のような液体=作中では”LCL”と呼称)になるということを意味すると考えられる)

⇒計画のトリガーは12体のエヴァシリーズとリリスの接触と考えられる。

②エヴァ初号機とエヴァシリーズによるサードインパクト

⇒ゼーレが物語の終盤に変更を余儀なくされた計画内容。ゲンドウがロンギヌスの槍をリリスから引き抜いたことによりリリスによるサードインパクトができなくなってしまう。そこでリリスの分身であるエヴァ初号機によるサードインパクトに変更。

⇒計画のトリガーは初号機以外のエヴァシリーズと初号機の接触。そのためにはエヴァ初号機パイロットの自我の消失が必要。エヴァ初号機起動にはパイロットが必要だが、サードインパクトを発動させるにはパイロットの自我は必要ない(→自我の消失→アンチATフィールド発生→人類のLCL化)。

③エヴァ初号機の中での人類の魂の融合

⇒ゲンドウが変更した計画目標に合わせ変更した計画内容。エヴァ初号機に取り込まれた妻ユイと再会をするために、サードインパクトですべてを滅ぼすのではなく、エヴァ初号機というかたちを残してエヴァとして人類の魂を生かしていく計画。

⇒計画のトリガーはレイとリリスの融合とエヴァ初号機パイロットの自我の消失。初号機パイロットの自我の消失に関しては②と同じ。違うのはレイの魂と融合したリリスが初号機に人類の魂を誘いエヴァ初号機のかたちを残す点にあると思われる。

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人類補完計画の計画過程・計画変遷

人類補完計画の計画過程や流れ、変遷は作中で語られているものから紐解くと以下の通り。


①第1使徒アダムを回収(2000年南極(別名”白き月”)にて)

②アダムの研究とアダムに基づくエヴァの開発推進(人工進化研究所にて)

③使徒タイプのエヴァ零号機とヒトタイプの綾波レイ誕生(魂が宿ったのはレイだけ)

④第2使徒リリスを回収(第3新東京市地下(別名”黒き月”)にて)

⑤リリスの保全を目的にジオフロント建設(後のネルフ本部)

⑥リリスのコピーとしてのエヴァ初号機完成

⑦エヴァ初号機稼働実験(⇒ユイが初号機のコアに取り込まれる(ユイ自身の意図で取り込まれた可能性あり))

⑧人類補完計画正式承認

⑨リリスの保全とエヴァの運用、使徒の殲滅を目的としたネルフ発足

⑩エヴァによる使徒との戦い開始(※使徒とは同じリリスから生まれながらヒトとは違い知恵の実を食べていない生存形態。リリスと融合すればサードインパクトを起こす存在。人類補完計画を邪魔する存在)

⑪南極(白き月)にてロンギヌスの槍回収

⑫ロンギヌスの槍をリリスに刺し、すべての使徒を殲滅した後の補完計画発動までリリスを不完全体にとどめる

⑬エヴァの稼働においてパイロットの搭乗を必要としないダミーシステム完成(⇒レイをベースとしたダミーシステムだったが初号機においてはユイが拒絶したため稼働せず)

⑭エヴァ初号機が電源稼働を必要としないS2機関(※詳細不明)を使徒から直接取り込む(⇒使徒同様自立行動が可能になる)

⑮成層圏の使徒の殲滅のためリリスからロンギヌスの槍を引き抜き宇宙へ投擲。リリスが不完全体の状態を維持できなくなる

⑯第17使徒(カヲル)を殲滅し、人類が使徒との生存競争に勝利

⑰エヴァ量産機の完成(※エヴァ量産機には第17使徒カヲルのダミーシステムを搭載)

⑱黒き月にて儀式の開始。エヴァ弐号機を初号機の生贄に捧げ、初号機と量産機、リリスと融合したレイにより人類補完計画発動

⑲シンジとアスカの生還により、ゼーレ、ゲンドウともに計画完遂はならず


⑦でユイが初号機に取り込まれたことを除き⑬まではゼーレ、ゲンドウ双方の行動計画は一致していたものと思われる。

⑭からゼーレとゲンドウの計画が分かれていき、⑲で双方とも目的を果たせない結果になったと考えられる。

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その他

①エヴァ弐号機の役割

弐号機は量産機の1体目。零号機の技術を生かしたものだと思われる(初号機は唯一リリスの分身であるという言及が作中であるため)。

コアは確認されていない。量産機との戦いではアスカは弐号機に母親を感じており、実際にその思いに応えるかたちで暴走も起きているが、コアがないことから、自身の母を感じた描写はアスカの心理描写であり、暴走が起きた理由はエヴァの動物的な獣性とアダムコピー(=イブ=エヴァ)の名残としての母性によるものと考えられる。

本来の役割は使徒の殲滅とサードインパクトの儀式のための1体になることであったと考えられるが、ゼーレとゲンドウが対立した結果、儀式のための生贄にされたということだと思われる。

②エヴァ零号機の役割

純粋に試作機であったと思われる(0ナンバーということでサードインパクトの儀式に参加する機体としてはカウントされていないと思われる)。

初号機や弐号機、量産機の技術的な基礎となると同時に綾波レイの開発とともに諸々の実験に利用されていたものと思われる。多くの零号機タイプの残骸も作中で描写されている。

もちろん使徒殲滅に利用することは当初から考えられていたと思われる。

③ATフィールドの役割

アブソリュートテラーフィールドの略称。

心の壁という表現も作中で用いられているが、哲学的な意味やロボットアニメのバリアー的な意味だけではない重要な意味がある。

それは他者との相対により自我、自己、自身を形作るものであるということ。

この壁が反転するエネルギー(アンチATフィールド)となったときイコール人類が個を持つ群体でいられなくなるときを意味している。

④ロンギヌスの槍の役割

恐らくヒトとしての存在・かたちを維持する機能を持つものだと思われる。

ヒトの始祖たるリリスのかたちを維持することに使用される一方、ヒトとは別の存在である使徒はATフィールドを貫き殲滅している。

人類補完計画発動時はエヴァ初号機に取り込まれ、その形状を失うことでアンチATフィールド発生の引き金となっている。

⑤シンジの役割

最終的にシンジの自我の消失が人類補計画のトリガーとなっているが、これは途中からエヴァ初号機による計画発動が必要になり、そのエヴァ初号機がシンジでしか動かないことから、そうなったと考えるのが適当である。

であるからこそ、計画が完遂できなかったと言える。

シンジの自我の消失はリリスと融合したレイにより始まっているが、そのときの内面描写(自我の確立と自我の消失のせめぎ合い)には主に4人の女性キャラクターが登場している。

ユイ、レイ、ミサト、アスカである。

ユイ、レイ、ミサトは主に自我の消失を促す側のせめぎ合いで登場し、アスカは主に自我の確立を促す側のせめぎ合いで登場している。

ゼーレもゲンドウもシンジの自我消失についてユイとレイが促すことについてはある程度想定していたのかもしれないが、アスカについては想定外だったのではないだろうか。

これこそシンジ自身の心の動きであり、庵野氏自身の心の動きであったのかもしれない。

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エヴァンゲリオンの公式関連商品

※エヴァを楽しむために最低限必須とも言える公式商品を紹介します。興味を持ったものがあればぜひこちらからご購入ください。

①ブルーレイボックス

②シナリオ集

③絵コンテ集

④原画集

⑤設定資料集

⑥コミックス

⑦動画配信サービス

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