久保建英マッチレポート 中国代表VS日本代表(2022W杯アジア最終予選②)

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試合結果

0-1 日本勝利

試合トピックス

23分 日本、久保が大迫とのコンビネーションでペナルティエリア内に進入し右足でシュート。ゴールポストに阻まれる

38分 日本、久保が遠藤とのワンツーから中央を突破しペナルティアークから左足シュートを放つ。キーパーが弾いたところを大迫が詰めるがゴールポストに阻まれる

40分 日本GOAL>>右サイドを突破した伊東のクロスに大迫が合わせゴール

86分 日本、柴崎がミドルシュート。キーパーがセーブ

久保・日本代表詳報

ようやくアジア最終予選での初勝利を飾った日本。

とにもかくにも勝ち点3を取れたことについては100点満点の評価をしていいだろう。

特にホームでの初戦を落とし、時間もあまりなかったところでのこの試合におけるこの結果は、これ以上望むべくもないだろう。

それが例え最少得点差による勝利だったとしてもショッキングな敗戦から特に心理面での難しさのあるコンペティションにおいてこの結果を導き出したことは素晴らしいと評すべきだ。

勝利の要因については、大きく四つある。

一つは、マインドセットだ。

この試合においては勝ち点3を取る以外はないということで日本代表のチーム全体から中途半端さが消えていた。

勝ち点3は点を取ることでしかもたらされない。そのため全員がとにかくすべてのプレーに対して”アグレッシブ”だった。つまりインテンシティが高かった。ボール奪取への意欲、ボール奪取後にゴールを目指す意欲が前の試合とは段違いであった。これは日本がいつも見せる標準的なプレーでもある。

日本が自身の持つ少なくとも標準的なプレーを見せられればアジアでは勝利を手繰り寄せられる。

初戦での敗戦から立ち直ったこの試合の経験を今後もチームとして生かして欲しい。

そして二つ目は久保の先発起用である。

ようやくA代表において久保に長時間のプレータイムが与えられたわけだが、やはりチームにとって有益な選手である。

日本の攻撃はすべて彼のファイナルサードでの緩急自在のプレーから始まった。小さいスペースへのパス、ドリブル突破、中央・右・左と相手のディフェンス構造を見極めたポジショニング、とすべてが中国を苦しめ日本に優位性をもたらした。

久保の戦術眼とクオリティが日本をかなり楽にした。久保がゴールを奪えなかったため最少得点での辛勝となったという見方が可能なくらいの試合への影響力であった。

20歳の久保の先発フル出場は監督の英断という範疇で語られる判断と言えるだろうが、プレーを見れば誰も英断だとは思わないだろう。普通の判断である。

なぜなら久保はチームにもたらせるものが鎌田や南野、他のどの選手よりも大きいからだ。

特に基本日本に対し守備を固めてくるアジア勢には久保がもたらせるものが極大化する。

守備を固められた局面ではタイミングやコンビネーションでのスマートな崩しを見せられる機会は限られてくる。またアジア勢はそうした崩しに対してはあまり恐怖心を抱かない。しかしそれとは対照的に個でドリブル突破やシュートシーンをつくるプレーに対しては強い恐怖心を見せる。

久保は日本で唯一こうしたプレーを常に見せることができる。しかもアジアにはいないレベルで。

後半途中から出た鎌田と久保のプレーを対比して見てもそれは明らかであった。監督も実感したはずだ。次の試合からレギュラー選手として久保を扱うだろう。

三つ目は、中国が日本を過剰にリスペクトしてくれたことだ。

中国は前半は5バックでいわゆる”バスを置く”ような戦術で試合に臨んだわけだが、これが日本の特に心理状態を楽にした。

もともと日本はアグレッシブにいくしかないと迷いの消えた心持ちで試合に臨んでいたわけだが、この日本の心理状態が良い方向にかみ合う相手の戦い方だった。

中国のプレスの強度も強くなかったことから、日本にとっては初戦の敗戦から落ち着きと自信を取り戻すという意味でもかなり有益な状況が生まれた。

そして最後は、会場だ。

中国のホームゲームの位置づけでありつつ、コロナの影響でこの試合はカタールで行われた。当然アンチ日本の雰囲気一色となる中国の観衆は不在であり、会場の雰囲気はフラットなものであった。審判団が観客から受ける独特のプレッシャーもなく完全に中立地での試合の雰囲気であった。

また日本にとっては中国現地での試合より恐らく試合前の様々な不便さやストレスも少なかったはずである。

ピッチコンディションの素晴らしさも日本にとって追い風となった。来年にはワールドカップ本大会が行われる会場であったことから、空調が完備され、芝の状態も完璧だった。ボールを走らせるプレースタイルの日本にはベストの環境であった。その証拠によくボールが走り、パススピードやボールタッチの質も各選手がいつも海外で見せてくれるような適切なものであった。(見ているほうにもそういう意味でのストレスがほとんどなかった)

こうしたことが今回の勝利につながった要因と言えるだろう。

ショッキングな敗戦から立ち直り、ようやく日本にとってのワールドカップアジア最終予選が始まった。残りの試合でも勝利を積み重ねていってほしい。

さて、久保であるが、ようやくA代表で先発フル出場を果たした。

ポジションはトップ下を基本に自由に動くという五輪代表と同じかたちだ。

上述した通り内容も良かった。

大迫のゴールを除けばこの試合における最大のハイライトをすべて創出したことでもそれがわかる。自らの仕掛けから相手守備陣をこじ開け、フィニッシュまで担当した。

なお、こうしたプレーを見せてくれたという事実は、彼がA代表においても特別な存在であることを物語っている。このチームでもエースプレーヤーとして君臨できることを証明してくれたと言い換えてもいいだろう。

ゴールという結果を残せなかったことだけが唯一にして最大の減点対象となるが、少なくともA代表でもレギュラープレーヤーとしての立ち位置を確保する試合になったことは間違いない。

とはいえ、久保の場合レギュラーで満足されてしまっては困る。日本のエースになってもらわなければいけないからだ。

この試合でもゴールを決めきれず、画面の前でがっかりした日本のファンも多いだろう。ハイレベルな崩しだけでも本来評価に値するはずだがそれで久保に満足している人はほとんどいないだろう。つまり、彼にはああいうシーンでゴールを決めることを意識的にも無意識的にも求めているというわけだ。

東京オリンピックのグループステージで感じたエクスタシーをこれからも多くの試合で感じさせてほしいと日本のサッカーファンは久保に期待し(てしまっ)ている。

非常に大きな期待値であるが、スペインや東京オリンピックでのプレーを見てしまってはファン心理としては期待しないほうが無理である。

久保のゴール。久保個人にフォーカスすれば次の試合の見どころはそれに尽きる。

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