久保建英のマジョルカでの全試合振り返りと総括(2019-2020シーズン)
レアル・マドリードに所属する久保建英の2020-2021シーズンのビジャレアルへの1年間の期限付き移籍が決定した。
2019-2020シーズンにおいて確かな存在感を示したことによるステップアップの移籍と言えるのは間違いないだろう。
ここでは、そんなワールドクラスへの道を歩む久保のマジョルカでの2019-2020シーズンを振り返りたいと思う。
全試合振り返り
マジョルカでの全試合における試合結果や各試合での久保に関するトピックスを追ってみる。
チームは残念ながら2部降格という結果になってしまったが、久保のチーム内での存在感は試合を重ねるごとに増していき、終盤にはエース級の選手となった。
(※画像をクリックして大きくしてご覧ください。↓)
※開催日は日本時間。この他国内カップ戦1試合に出場し、ノーゴールノーアシスト。
総括
マジョルカでのシーズントータル(リーグ戦)は、出場試合数35試合(内先発23試合)、出場時間数2513分、4ゴール4アシストという結果であった。ゴール数・アシスト数に準ずる成績としてはPK奪取数2も加えていいだろう。
この結果については、レアル・マドリードのトップ選手として定期的にプレーできるかを一つの評価基準とするなら、ぎりぎり合格点といったところだろう。
以前にも書いたが、筆者は5ゴール5アシストが合格目標と考えていたので、PK奪取数を加えて補欠合格といったところだと考えている。
厳しい評価のように感じるかもしれないが、久保の能力やポテンシャル、本人が目標としている頂点への道のりを考えればあながち間違った評価ではないと考えている。
結果もそれを証明しており、来季はステップアップとなる国内外の多くのクラブからレンタルと完全移籍の打診を受け、最終的に欧州カップ戦を戦うリーグ5位のビジャレアルへのレンタル移籍が決まった点、2020-2021シーズンにおいてレアル・マドリードのEU圏外枠(チームに3枠。現状ヴィニシウス・ロドリゴ・ミリトンのブラジル人3選手に与えられている)を奪い取るまでには至っていない点から、こうした評価だったというのが客観的な見方でもあるだろう。
ちなみに、久保と同年代の主なラリーガのライバル選手たちのリーグスコアと比較すると、
ファティ(バルセロナ)が1026分出場7ゴール1アシスト、
フェリックス(アトレティコ)が1747分出場6ゴール1アシスト、
ヴィニシウス(マドリー)が1354分出場3ゴール1アシスト、
ロドリゴ(マドリー)が1022分出場2ゴール0アシスト、
であり、チーム力(ゴールの機会が多い)や出場時間数をトータルで勘案すれば、これらの選手たちに勝るとも劣らないスコアであったと評価できる。
なお、2020-2021シーズンからマドリー復帰が決まったウーデゴールは2532分出場4ゴール6アシストであった。
次に、マジョルカでのプロセスに目を向けてみたい。これははっきり言って日本人離れした素晴らしいプロセスであった。チーム戦術へのアジャスト、チームそのものへの溶け込み、を通してシーズン終盤にはエースとして君臨している。もはやどこのチームでも自身の特長を発揮できるワールドクラスの選手としての基盤が構築されていることの証である。
レアル・マドリードでのプレシーズンでも素晴らしいものが見られたが、マジョルカではさらに素晴らしいものが見られた。2部から上がってきて戦術・哲学・文化・雰囲気等において確固たる基盤が構築されているチームに1年間のレンタルでシーズン始まってからの加入となったわけだが、このシチュエーションはチームにアジャストする難易度としては相当高いものである。
例にもれず久保も当初は苦労している。しかし、言葉が話せずその国や地域の文化になかなか馴染めず求道者のようにトレーニングに励むだけのこれまでの日本人選手とは全く違ったリアクションを久保は見せている。
積極的な会話・自己表現・ジェスチャーといったアクションによるチームへの順応に加え、高いサッカーIQによるチーム戦術への順応を並行して実践していた。(守備の負担の大きさは久保も当初は戸惑っているが、ただ言われた通り守備に奔走するのではなく、自身の攻撃面での特長をスポイルせずアジャストして見せている。言われた通りのことをすることにこだわり自身のプレーの特長と乖離することに悩むこれまでの日本人選手のような姿は全くなかった。)
それは試合中のリアクションからも明らかで、審判とのコミュニケーション、ファールのアピール、相手選手の激しいプレーに対する強いリアクション、積極的な会話交渉によるキッカー奪取など、これまでの日本人選手のアクションではなかなか見られなかった頼もしい姿を見せてくれたことが一つ。
そして、プレー面では、数的不利をつくらず相手のコースを消す守備を破綻なく行う術を身につけるとともに、天才的なアングルの確保と細かいタッチによるドリブルでの局面打開、スプリント回数の増加によるカウンターでのソリッドなプレーの増加、右足の使用によるプレーの選択肢の増加など我々でも一目でわかる成長を見せてくれた。
これらを通じて、ゴールやアシストという目に見える結果を出すことを決定的な契機としてチームからの信頼を勝ち取っていった。
特にコロナブランク明けのリーグ終盤戦では、過密日程にも関わらずほぼフル出場を果たし、チームメイトが常に久保を探し久保に頼るというシーンも珍しくなくなった。
こうして無事今季欧州デビューを飾り、世界に存在感を示した久保建英。
彼の頂点への道のりを来季以降も引き続き期待とともに追っていきたい。
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