ガンダムSEEDシリーズのあらすじや見方、魅力を解説する
21世紀のファーストガンダムと銘打たれ、その名に相応しく驚異的な大ヒットとなった「機動戦士ガンダムSEED」とその直接の続編である「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」。
ここでは、そんなガンダムSEEDシリーズのあらすじや魅力、見方、楽しみ方などについてわかりやすく解説したいと思います。
アニメ作品、エンタメコンテンツとしての面白さは勿論のことですが、それ以上に戦争の愚かしさなどについて非常に考えさせられ、様々な思いを一人ひとりの心に刻む作品です。
老若男女問わず、まだ見ていない人はぜひ見て欲しいと思います。
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ガンダムSEEDシリーズの概要
・「機動戦士ガンダムSEED」・・・2002年10月から2003年9月にかけて放送されたテレビアニメ。全50話
・「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」・・・2004年10月から2005年10月にかけて放送されたテレビアニメ。「機動戦士ガンダムSEED」の続編として全50話が放送
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ガンダムSEEDシリーズの世界観
・人類の宇宙進出が進んだ時代における戦争の物語
・遺伝子操作により病気に強く身体能力や知性などに優れた存在として生まれた”コーディネーター”と呼ばれる人々と遺伝子操作を一切していない自然のままの存在として生まれた”ナチュラル”と呼ばれる人々の間の様々な軋轢が互いを敵とする戦争に発展していく
・コーディネーターは地球の近くの宙域に”プラント”と呼ばれる生活都市、国家を築きそこで完全な自治による生活をしている。つまり、基本的な生活エリアや生きる国家についてナチュラルとは違う時代となっている。そうした時代にあっては互いに軍備を持つ状況が生まれ、プラント(コーディネーター)は”ZAFT(ザフト)”と呼ばれる軍隊を持ち、地球(ナチュラル)は”地球連合軍”と呼ばれる軍隊を持つに至っていた
・戦場においては、ガンダムのようなMS(モビルスーツ)が主力兵器となっている
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ガンダムSEEDシリーズの主要キャラ
ガンダムSEEDシリーズは、基本的にこの6人の少年少女の物語である。
キラ・ヤマト
ガンダムSEEDシリーズ全体を通しての主人公。コーディネーターの少年。ガンダムSEEDのときは16歳、ガンダムSEED DESTINYのときは18歳。底抜けに優しい性格だが無邪気な一面も持つ。
主役機であるストライクガンダム、フリーダムガンダム、ストライクフリーダムガンダムのパイロット。
アスランとは小さい頃からの幼馴染。作中でカガリとは双子であることが発覚し、ラクスとは恋仲になる。
コーディネーターの中においても最高の天才と言われるほどの才覚を持つ。
戦争における多くの悲しい経験を経て成長していく。そして次第に自身の能力に対する責任や覚悟を強く持つようになり、平和な世界を目指し戦争に立ち向かっていく。
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ラクス・クライン
キラと恋仲になるヒロイン。コーディネーターの少女。ガンダムSEEDのときは16歳、ガンダムSEED DESTINYのときは18歳。おしとやかで慎ましい性格をしつつも凛とした芯の強さを持つ。
プラントの名家に生まれ、類まれな歌声を持つ歌姫としてプラントにとって大きな存在。
知性のみならず、この世界における随一の決断力やカリスマ性を持ち世界を導くことのできるリーダーとしての存在感を有している。
絶対的な能力を持つばかりに悲しみに満ちている孤独なキラに寄り添う。キラにとっては唯一本当の意味で同じ世界にいてくれる存在。
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アスラン・ザラ
キラの幼馴染。コーディネーターの少年。ガンダムSEEDのときは16歳、ガンダムSEED DESTINYのときは18歳。真面目な性格ゆえに不器用な一面を持つ。
赤紫を基調とした準主役機に該当するイージスガンダム、ジャスティスガンダム、インフィニットジャスティスガンダムのパイロット。
プラントの名家(作中で父はプラントの最高権力者になる)に生まれ、ラクスとは当初婚約者であったが別れることとなり、カガリと恋仲になる。
パイロットとしての腕は超一流。キラを除けば及ぶ者はいないトップガン。
ただキラやラクスのような最高の天才ではない。アスランを天才と呼ぶかどうかは天才の定義にもよるだろうが、いずれにせよキラやラクスより普通のコーディネーターよりの立ち位置にいる存在として作中では表現されている。
ガンダムSEED DESTINYではカガリとの関係や様々なことに対する焦りなどから感情的な行動を繰り返す。
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カガリ・ユラ・アスハ
キラの双子でアスランと恋仲になるヒロイン。ナチュラルの少女。ガンダムSEEDのときは16歳、ガンダムSEED DESTINYのときは18歳。ときに乱暴な言葉を使うなど男勝りの性格をしているが育ちの良さや女性らしさが何気ない仕草などに出る。
地球のオーブという国の国家元首の娘として育ち、ガンダムSEED DESTINYでは国家元首となる。
ナチュラルの中ではパイロットとしても為政者としても優れた才能と存在感を持つ。ガンダムSEED DESTINYでは、為政者としては経験不足をさらすことになるが最後はそれを乗り越えている。
なお、プラントのトップの息子であるアスランとオーブのトップの娘であるカガリという組み合わせはいわばガンダムSEEDシリーズにおけるロミオとジュリエットであろう。
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シン・アスカ
ガンダムSEED DESTINYからの登場。ガンダムSEED DESTINYでは主人公の位置づけだが、ガンダムSEEDシリーズ全体を通しての主人公ではない。コーディネーターの少年。16歳。直情的で一本気でありながら素直ではない性格をしている。子供っぽい言動も多いが心根は優しい普通の少年。
生まれはオーブだが、戦争で家族を失いプラントに移住。そこでZAFTに入隊する。
ガンダムSEED DESTINYの主役機であるインパルスガンダム、デスティニーガンダムのパイロット。パイロットとしての腕は他の追随を許さないくらい一流だが、キラやアスランに及ぶレベルにはない。
物語においては徹頭徹尾悲しみを背負い、ラストシーンまで彼に救いはほとんどない。そういう意味では視聴者にもフラストレーションを与える存在だが、世界を俯瞰で冷静に見ることなどできない戦争の当事者となったティーンエイジャーとはこういったものなのかもしれない。また、なまじパイロットとしての才能があるだけに本人に何も自覚がないまま事態を動かしていく様は何とも言えない。
彼にとっての唯一の救いが恋仲となるルナマリアである。彼女だけが唯一シンの悲しみと憤り、自責、後悔など様々な感情をシンと同じ立場で理解し、無条件で隣にいてくれる存在となっている。
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ルナマリア・ホーク
ガンダムSEED DESTINYからの登場。シンにとってのヒロインの位置づけ。コーディネーターの少女。17歳。勝ち気でサバサバとした性格をしているが女性らしい思いやりや柔らかさ、可愛らしさも併せ持つ。
シンと同じくZAFTに所属している。シンがデスティニーに乗り換えてからはインパルスのパイロットとなる。
作中でシンと恋仲になり、シンの悲しみを癒し未来への救いを与える唯一の存在となっている。
声優は坂本真綾さんであるが、彼女は死んだシンの妹の声も演じている。同じ声としたのは間違いなく意図的である。シンにとって妹と同じ声(似た声)であるところに救いを用意したといったところだろう。同時にシンにとって年上としたのは、妹を重ねるという動機付けによる、互いにとって悲しい恋にならないことを明確にした結果であると考えられる。
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ガンダムSEEDシリーズのあらすじ
ガンダムSEEDのあらすじ
オーブの宙域にある都市であるヘリオポリスで学生をしていたキラは、ある日ヘリオポリスにある新型のガンダムを強奪しにきたZAFTの襲撃に巻き込まれ、成り行きでそのうちの1機であるストライクに乗り込みアスランのいるZAFTと戦うことになってしまう。
ヘリオポリスでの危機は脱したものの地球連合軍の最新鋭艦アークエンジェルと行動をともにすることになったキラは、ストライクで追ってくる敵を撃破していく。人を殺し、友と戦うことになったキラは迷いながらも戦いを続けるが、とうとうアスランとの殺し合いにまで発展する。
キラはラクスのもとで、アスランはカガリのもとで一命を取り留めるも、戦火は大きくなっていくばかりである。その状況を目の当たりにしたキラ、ラクス、アスラン、カガリは、最新鋭のガンダムであるフリーダムとジャスティスやその運用艦エターナルを駆り、アークエンジェルらとともに力を合わせ、多くの命を失いながら戦争を止める。
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ガンダムSEED DESTINYのあらすじ
2年後、再びプラントと地球の戦争が始まってしまう。ZAFTの新型MSを地球軍が奪取したことを発端に、廃棄プラントとなっていたユニウスセブンの地球への落下事件を経て再び戦火が拡大してしまう。
そうした中、ZAFT軍のパイロットであるシンはインパルスガンダムに乗り、地球連合軍との戦いの中で戦果を上げていく。
一方、アスランはそれまで住んでいたオーブを飛び出し戦争を止めるためにZAFTに復隊する。そして、シンやルナマリアのいる最新鋭艦ミネルバに合流し、彼らとともに地球連合軍との戦いに身を投じる。
戦火が拡大の一途を辿る中、戦いを止めるためにキラもまた再びフリーダムに乗り込み、ラクスやカガリらとともにアークエンジェルと合流する。
キラはアスランやシンと戦場で戦うこととなり、遂にフリーダムがシンの乗るインパルスに大破させられてしまう。
フリーダムの大破をきっかけにその命令を下したプラント最高議長であるデュランダルの目的を理解したアスランは、ZAFTを抜けキラたちと合流する。
プラントの最高議長であるデュランダルは遺伝子により運命と役割をあらかじめ管理することで争いをなくすという新たな世界秩序を構築することを目的としていたのだった。
そして、戦局は地球連合軍の主力部隊を壊滅させたプラントとデュランダルに従えないキラたちの戦いに移っていく。
シンとルナマリアは戸惑いながらもデュランダルの目的に従い、キラたちと対峙することになるが、新たにインフィニットジャスティスに乗ったアスランに諭され、敗れる。
最後はキラがデュランダルと対峙し、彼に未来への覚悟を示す。そしてデュランダルの死とともに戦争を止める。
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ガンダムSEEDシリーズの見方、楽しみ方
戦争を扱っているため様々なテーマが込められており、それに応じて様々な見方を楽しめるのがガンダムSEEDシリーズの魅力の一つである。
戦争の物語として
ガンダムSEEDシリーズの最大のテーマは戦争である。
プラントと地球、ZAFTと地球連合軍、ナチュラル至上主義者のブルーコスモスと過激派のプラント評議会、日本がモデルになっている中立国オーブ、など世界の情勢や思想、人類の業が戦争を通してあらわになっていく。
多くの考えさせられるテーマが込められているが、中でも戦火が拡大していく様は視聴者の心に強く残る。
差別意識、知らない他者や言葉がわからない他者への恐怖などは、平和なときは理性でコントロールでき、対話で解決を図れるが、自分や家族の身に危機が迫ってくるとそれをコントロールすることは難しくなる。戦争はそうした人間に内在する火種が一気に燃え上がってしまうことだということを教えてくれる。一度怒りや悲しみといった負の感情に支配されるとそれを止めるのは容易ではないということだろう。
平和なときは、美味しいご飯を食べ、温かい布団で眠ることでそれを正の感情で沈めることができるが、戦時中はそうではない。心が荒み続け摩耗し、どんどん「戦う」「殺そうとしてくる相手を殺す」しかなくなる思考に追い詰められていくのだろう。そういう世界は生きているうちに経験したくないものである。
作中で語られているセリフでこうしたことを端的に表現しているものがある。
「戦火は広げるのは容易いが、消すのは難しい」
「殺したから殺されて、殺されたから殺して、それで最後は本当に平和になるのかよ!!」
「なんでトールはいないのに。なんであんたなんかがここにいるのよ!!」
「戦争にルールなんてない。ならどうやって終わらせる。互いに敵を滅ぼしてかね」
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遺伝子操作の功罪の物語として
ガンダムSEEDシリーズは、戦争アニメではあるが、その戦争に行き着いてしまう一つの重要な要素として、遺伝子操作により生まれたコーディネーターという存在の功罪についても強いメッセージ性を含んでいる。
具体的には、コーディネーターは人類の発展・進化への希望の証として描かれている一方、その進化のための犠牲(人体実験やクローニングなど)についても明確に描写されている。
さらにその犠牲のうえに成り立っているにも関わらず、遺伝子を操作したことにより進化への多様性を失い子どもが生まれにくくなっていることなども表現されている。
また、コーディネーターの存在がナチュラルの妬みや恐怖心を喚起する結果にもなっている。
ガンダムSEED、ガンダムSEED DESTINYともラストはコーディネーターの最高傑作であるキラが一つの答えを出しているが、それも恐らく唯一無二の正答ではないだろう。
戦争についてだけでなく遺伝子操作についても考えさせられる物語になっている。
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キラとラクスの物語として
二人とも最初は戦争に関係のない普通の少年少女として登場する。しかし戦争に関わっていく中で、その能力が開花していくと、自覚と責任を問われるようになっていく。
ガンダムSEEDでは、キラは戦場で悲しい経験を繰り返し、その悲しみを背負ったキラをラクスが見て、二人が自覚と覚悟を持ってその才能や力を使うに至る物語でもある。
ガンダムSEED DESTINYでは、その自覚と覚悟を強くし、二人で世界の未来を背負うことを決めるに至る物語でもある。これは、ガンダムSEEDシリーズで完結させたいテーマでもあったのだろう。
特にガンダムSEED DESTINYでは、その過程が丁寧に描かれている。いったんは戦争の悲しみを癒すために世界から逃げ静かに暮らす選択をし、ひとたび立ち上がれば世界が二人に責任を負わせようとし(カガリやオーブだけでなく、シン、レイ、デュランダルの感情の行き先にもなっている)、ラストでは遂に世界の未来に責任を持つ覚悟を示す、といった流れである。
なお、男女としての物語も丁寧に描かれている。
ガンダムSEEDでは、短い時間の中でも、ボーイミーツガール的な出会いから始まり、愛情を育みながら、同じ世界に立つことのできる価値観や能力を理解し合うに至っている。
ガンダムSEED DESTINYでは、ラクスは常にキラに優しく寄り添っている。戦争から離れ静かに暮らしているときは勿論、ひとたび立ち上がった後は、皆キラに頼ってしまう中、ラクスだけは世界のすべてを背負うことになる優しいキラに深い愛情の眼差しを向けている。そして、ともに平和な世界に向け、ラクスはキラの行動を支えるための最大限の行動をとり、キラはそのラクスを守る行動をとっている。
特にガンダムSEED DESTINYでは、二人の関係性は一貫して絶対普遍のものとして描かれている。(オープニングやエンディングの映像でも)
キャラクターにスポットライトを当てるならガンダムSEEDシリーズは間違いなくこの二人の物語と言っていいだろう。
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アスランとカガリの物語として
キラとラクスの物語が作品世界の全体を担うものだとするならば、アスランとカガリの物語は戦争における男女のドラマを担うものだろう。
ガンダムSEEDでは、ドラマチックな出会いに始まり、戦争が深刻化する中互いに思いを深め合っていっている。物語のテンションはこの二人のドラマのドラマチックさと比例していた。話がクライマックスに向けグングン盛り上がる中、この二人の関係もグングン盛り上がっていった。演出も明らかにそうであった。
戦場での愛がテーマだったと思うが、もっと言うと吊り橋効果をドラマチックに描くとこういうことなのかもしれない。平時であれば出会うことのなかった二人、出会っていたとしてもその立場の違いからこのような関係にはならなかったかもしれない、ということを考えるとなおさらそう思える。
この二人に熱いドラマを感じず作品を楽しめなかった人は皆無であろう。
ガンダムSED DESTINYでは、ガンダムSEEDで盛り上がった熱がある程度冷めたところからスタートしている。アスランはカガリと一緒にいるものの国家元首となっていたカガリとは立場の違いは明確で、そうしたことによるちょっとした行き違いからすれ違いの物語を展開し、最後まで完全に手を取り直すことはできていない。
この展開は、アスランに、オーブ、プラント、そしてそれぞれから見える地球軍といった戦争における様々な視点をリアルタイムで視聴者に見せるのに必要なことでもあったのだろう。
しかし、特にガンダムSEEDから見てきたファンの心理からしてみればフラストレーションが溜まり、最後まで消化不良であった感は否めない。
ガンダムSEEDシリーズ最大の積み残しはこの二人の関係だろう。もし続編があるのならこの二人の関係性にフォーカスを当てた物語が用意される可能性が高いのではないだろうか。
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シンとルナマリアの物語として
ガンダムSEEDで戦争を止めることに成功したキラたちが絶対普遍の正義ではないという事実を突きつける存在として登場したのがシンだろう。そしてそれはガンダムSEED DESTINYのテーマでもあるだろう。
シンは、ガンダムSEED時のオーブと地球軍の戦闘の折、その戦闘行為の中で自分以外の家族である父・母・妹が目の前で全員死んでいる。その死をもたらしたフリーダムや地球軍、オーブ、戦争すべてを憎んでいた。
そうした動機からZAFTに入隊し、配属後にインパルスが与えれられる。実戦を通じて強くなっていくにつれ、戦闘だけでなく戦争そのものに少なくない影響を与える存在になっていく。そして視聴者の視点からはデュランダルにいいように使われるようになっていく。
しかし、これは神の視点で見ている視聴者だからこその見方で、シンにしてみればいいように使われているということにはならないだろう。戦争の悲しみを少しでもなくすために軍人として頑張っているだけなのである。
だが、その持っている力が悲劇を呼ぶ。地球軍を倒せば倒すほど戦火は拡大し、目の前で敵味方問わず多くの命が失われていく。頑張れば頑張るほど悲劇が訪れる。
そのことが最も象徴的に描かれているのが、地球軍の少女ステラとの出会いと別れだろう。戦闘の過程でミネルバに収容されることとなったステラだったが、その命が危ないと知ったシンは、独断で地球軍に返す。だがその後戦場で再会することになる。今度はステラに自分の命が狙われ、フリーダムに助けられるが、ステラが目の前で死んでしまう。シンの行動がすべてシンにとって裏目に出る結果となっている。自分のせいでステラが死んでしまったのである。
さらなる怒りに燃え、もう思いの行き先がフリーダムだけになってしまう。自分を助けてくれたフリーダムを大破させたときに涙を流しているがもう自分でも感情の行き先がわからなくなっていたのだろう。
そして、唯一自分を叱ってくれたアスランも自分の目の前から去る。(シンからすれば、オーブを守りZAFTでも戦えるというアスランはできることの多い憧れの存在であったのだろう。アスランに対する生意気な言動はその愛情表現だったのだろう)
自分の行動は間違っていると世界が否定してきていると言っても過言ではないような出来事の連続だ。しかし、そうした中でも最後まで気持ちを変えていない。
軍人らしからぬ行動や子供っぽい言動に不快感を感じていた視聴者もいるかもしれないが、シンに対して最もストレスを感じたのはここだろう。
しかしそれこそがガンダムSEED DESTINYのテーマの一つであったのだろう。つまり戦争に勧善懲悪は存在せず、気持ち良さなんてないということである。不快感と悲しみしかないのである。
最後の最後でアスランに負け、ようやくその悲しみから解放される。シンにとってはアスランとキラが生きていて、自分を止めてくれる強さがあったことは救いとなったはずだ。
さて、このシンの物語において重要な役割を果たしているのがルナマリアだ。
上述の通りシンはガンダムSEED DESTINYにおいてガンダムSEEDに対するアンチテーゼ的な役割を担う存在であるため、救いはほとんどない(キャラ視点で見ればかなりいじめられている)。
だが救いが一つだけある。それがルナマリアの存在である。常に自分と同じ側にいてくれ、最後までともに生き残ってくれている。(ちなみに、ルナマリアはかなり多くの場面でいわゆる死亡フラグが立っていた。ガンダムSEED DESTINYで最もドキドキしたのがルナマリアの生死だったと言う人も多いのではないだろうか)
前半は仲の良い同僚同士という関係性だが、後半ルナマリアがシンにより妹を失う経験をしたことがきっかけで恋仲になる(実際は生きていた)。不思議に思う人もいるかもしれないが、恐らくルナマリアはこの出来事でシンの本当の意味での心の痛みを知り、シンを深く理解し愛するようになったということなのだろう。
そして以降は、シンにとっては唯一と言っていいほどの味方であり、安らぎや愛情をくれる存在になっている。実際にレイ(シンとルナマリアの同僚でデュランダルの直属の部下)はストライクフリーダムとの戦いに向かうシンについていこうとするルナマリナに向かって「今のシンにお前は邪魔だ」と発言していたり、シンに迷いが生じそうなときはルナマリアをシンに近づけさせないようにしている。これは、ルナマリアがシンにとって優しさや愛情を取り戻す存在であるということを示していると思われる。
ラストでは、戦争が終わり、シンとルナマリアが月面で抱き合いながら涙するシーンがあるが、ガンダムSEED DESTINYのラストは最初からこのシーンと決めていたのかもしれない。
なお、余談だが、シン役の声優鈴村健一さんとルナマリア役の声優坂本真綾さんは作品終了後しばらくしてから結婚している。シンの不憫さに辛い思いを抱いた人ほどこの結婚をシンとルナマリアに重ね合わせて喜んだのではないだろうか。
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ガンダムSEEDシリーズの魅力
戦争の愚かしさを教えてくれる
ガンダムSEEDシリーズは、戦争の愚かしさをわかりやすく教えてくれるアニメ作品である。
様々な事情が入り組んで戦争に発展しているが、根本的な理由は人間に内在する感情によるものと断言している。
戦争は、悲しみや憎しみに感情が支配された人間が、失うものしかないとわかっていながら「戦うしかない」と追い詰められていくものであるということも伝えている。同時に対話という人間の人間たらしめる行動が失われていくものでもある、と。
現実においても、戦争をしている国はあるし、平和な日本にいてもときに他国に対する憤りを感じることがある。しかし、それは対話で解決すべき問題だ。武力衝突など悲劇しか生まないことを我々は歴史からも知っているはずだからだ。
少しでも戦争に向かいそうな空気、他国を憎む空気になりそうなときは皆でガンダムSEEDシリーズを見るべきだ。それほどの作品であるように思う。
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ドラマチックなラブストーリー
ガンダムSEEDシリーズでは、素晴らしくドラマチックなシナリオと演出で、主要キャラを中心とした男女のラブストーリーが展開されている。
「戦場と愛」は古今東西エンタメ作品の定番の一つだが、それを変に斜に構えることなく王道的な内容で仕上げている点は21世紀のファーストガンダムと銘打つに相応しい。
カッコいい男の子と可愛い女の子がボーイミーツガールから恋に落ち、恋仲になり寄り添って生きていく。
これに心地よさを感じない視聴者は皆無であろう。
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従来のガンダムシリーズの設定に優れた新解釈
ガンダムSEEDシリーズでは、全ガンダムシリーズの世界観をいい意味で踏襲しつつ、優れた新解釈にアレンジしている。
これまで無条件で使われていた「ガンダム」という名称だが、本作では「GUNDAM」とアルファベットでの表記を正式名称とし、そのアルファベットは最新気鋭のモビルスーツを表す複数の用語の頭文字という解釈としている。(ジオンに語感を似せたZAFTも同様である。)
また、登場するモビルスーツや戦艦の名称も、ガンダムという名称や造語による機体名を用いず、常用ワードを使用している。
「フリーダム」「ジャスティス」「デスティニー」「レジェンド」「プロヴィデンス」「暁」「エターナル」などである。
これらは、一語でその機体の意味するところや役どころを表すものとなっており、シンプルだからこそ、メッセージ性も強くスタイリッシュである。
ちなみにキラの乗るフリーダム(=自由)は個人の尊厳を守る絶対的な価値観であり、アスランの乗るジャスティス(=正義)はそのありようは使う者の価値観で変わるものである。ラクスの乗るエターナル(=永遠)は時間的な形容詞であるが、フリーダムとジャスティスの専用運用艦という点は実に示唆的だ。
その他にも、従来のガンダムシリーズにおいて「ニュータイプ」と表現されていた特殊な才能があるが、ガンダムSEEDシリーズでは、これを「SEED(=種)」という言葉に置き換えている。
この「SEED」は、その因子を持つ者が極限の状態になったときにのみ発現するものとして作中では表現されている(頭の中で種が割れる)。戦闘中などにおいて集中力が極限まで高まり無駄な思考が一切なくなるというもの(スポーツ選手で言うところの”ゾーン”のような状態)で、キラ、アスラン、シン、ラクス、カガリのみが見せている。
この能力や描写については詳細が明かされることはなかったが、だからこそ同様に具体的な説明がないニュータイプ能力をアレンジしたものであることは間違いないだろう。
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