描く相似形。久保とメッシが似ているこれだけの理由
バロンドール(世界最優秀選手賞)を6度受賞し、所属クラブであるバルセロナでは数多のタイトルを獲得してきた名実ともに世界最高の選手であるメッシ。
そんなメッシに、日本の偉大な若き才能である久保建英は似ていると言われている。
どこにその理由があるのか、なぜ”日本のメッシ”と言われるのか。描く相似形がどこまで久保を頂点に近づけるのか、探っていきたい。
プロフィールの類似性
メッシ | 久保 | |
---|---|---|
出身 | アルゼンチン | 日本 |
生年月日 | 1987年6月24日 | 2001年6月4日 |
身長 | 170cm | 173cm |
体重 | 72kg | 67kg |
利き足 | 左 | 左 |
ポジション | FW、MF | FW、MF |
所属ユース | ①ニューウェールズ(8~13歳) ②FCバルセロナ(カンテラ)(13~16歳) | ①川崎フロンターレ(9~10歳) ②FCバルセロナ(カンテラ)(10~14歳) ③FC東京(14~16歳) |
所属クラブ | ①FCバルセロナB(16~17歳) ②FCバルセロナ(17歳~) | ①FC東京(16~18歳)(*1) ②レアル・マドリード(18歳~)(*2) |
クラブ個人成績:16~17歳時 | 5試合出場0G0A | 4試合出場0G0A |
クラブ個人成績:17~18歳時 | 24試合出場7G1A | 16試合出場2G0A |
クラブ個人成績:18~19歳時 | 25試合出場8G5A | 36試合出場4G4A |
A代表デビュー | 2005年8月(18歳) | 2019年5月(17歳) |
A代表個人成績:デビュー年 | 5試合出場0G | 7試合出場0G |
代表アンダーカテゴリー成績 | 23試合出場16G | 33試合出場16G |
クラブ背番号(16~19歳) | 30→19 | 41→15→26 |
(*1)途中横浜Fにマリノスにレンタル移籍あり
(*2)途中マジョルカ・ビジャレアルにレンタル移籍あり
比較が可能(同条件での抽出が可能)な項目を挙げて比較をしてみた。身体のサイズ等のプロフィールが非常に似ていることに加え、バルセロナのカンテラ出身である点を中心にキャリアも類似性が高いことがわかるだろう。
プレースタイルの類似性
ともに左利きで、左利き特有の視野感や姿勢を保ちながらプレーアングルを確保する様は、ほぼ同じである。また、上背がないことから、ボールを持つプレーで違いを生み出し、ゲームに影響を与えることのできるプレーヤーとしてプロの世界で生きているという意味でも同じだ。
こうしたカテゴリーにいる選手は過去も現在も常におり、サッカーの世界では決して珍しくない。
では、なぜ久保は”日本のメッシ”と言われるほど類似性を強調されているのだろうか。
一つは、独特のボールタッチである。
メッシはドリブルをする際、細かいタッチを入れる。一つの方向に進むとき、メッシ以外の選手は1タッチで進行方向に向けてボールを動かすが、メッシは2タッチ、3タッチと入れ、微妙に角度を変えながら(あるいは変えるフリをしながら)、進む。こうすることで相対した選手はタイミングをとれなくなり、なすがまま抜かれる。
これはトレーニングしたからといってできるようなものではなく、世界で唯一メッシ以外に使えるのは久保だけである。
次に、バイタルエリア付近での”中途半端なポジション”でボールを受けられる点である。
二人とも相手のフォーメーション・ポジショニングにはまらない位置を瞬時に見つけることができ、そこでボールを受けて相手チームに混乱をもたらすことができる稀有な才能の持ち主である。
見つける能力も特殊なものだが、なんといってもそこでのボールの受け方と展開力もセットでずば抜けている。
中途半端なポジションはパスを出す味方にとっても難易度の高いものである。往々にしてそこで受けようとすると難易度の高いパスがくるわけだが、これを次につなげることができなければ意味がない。
ここで必要になってくるのはプレー選択肢を多く持つための視野の確保とボールコントロールの多彩さである。つまり、瞬時に適切なアングルを確保し、そのアングルから得られるプレーの選択肢を最初のボールタッチで実現に導く能力である。この点についても強い類似性がある。
最も特徴的な類似点はこれら2点であるが、それ以外にも久保がメッシを彷彿とさせるプレーは数限りなくある。振りの小さい左足のキックもそうだ。
振りが小さいとモーションが小さく相対する選手はタイミングをとりづらい。それだけでもメリットになるが、二人の素晴らしいところは、インパクトの強さと精度もセットになっているところである。
メッシのほうが威力も精度も久保より高いが、プレーの種類としての類似性は高いと言えるだろう。
さらに、判断力も特筆すべき類似性だ。ピッチが俯瞰で見えているのではないか、さらには、ピッチ内22人の戦術上の状況が見えているんじゃないかというくらい間違った判断をするシーンが全くない。
これはなかなか説明しづらいが、自身のポジショニングによりチームに適切なトライアングルを形成させ、ボールを運ぶルートを創出するし、相手チームの重心(右サイドよりか左サイドよりか、後ろ向きか、前への圧力か、など)を瞬時に判断し、味方に対し前に走らせるパスを出したり足元に出したり、サイドチェンジを促す展開をつくったり、後ろにパスを戻したり、ドリブルやワンツーで局面を打開しにいったり、がすべて完璧なのである。
画面などで俯瞰で見てる我々が「こうすればよかったのに」と思うことが全くないというのはちょっと信じられないレベルなのではないだろうか。
サッカーIQの高さ、バルサイズム・クライフイズムと言ってしまえば簡単だが、そうした一言に収まるレベルとは到底思えないのである。
最後に
久保はメッシではなく、イニエスタに似ている、いやいやダビド・シルバだろ、といったたくさんの見方があるかもしれないが、単純にプロフィールもそうだし、プレーを見ていると体型や姿勢、ボールの触り方など、細かく見れば見るほどメッシと久保は似ていると感じる人が多いのではないだろうか。
勿論、まだまだ久保がメッシに比肩し得ると考えるのは時期尚早であるのは間違いない。
ただ、トレーニングでは身につかないあるいは他の選手では持ちえないメッシに似通った天賦の才を授けられていることも疑いようのない事実である。
二人を重ね、久保に世界の頂点へと近づいて欲しいと考えるのは日本人としてはごく自然な発想であろう。
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