久保建英マッチレポート ビジャレアルVSシワススポル(2020-2021ELグループリーグ①)
試合結果
5-3 ビジャレアル勝利
試合トピックス
13分 ビジャレアルGOAL>>チュクエゼの左足シュートのこぼれ球を久保が押し込む 【久保EL1ゴール目(今季初ゴール)】
20分 ビジャレアルGOAL>>久保のスルーパスからバッカがダイレクトでシュートしゴール 【久保EL1アシスト目(今季初アシスト)】
33分 シワススポルGOAL>>抜け出したカヨデがペナルティエリア内でシュートを放ちゴール
35分 ビジャレアル、久保のパスを受けたバッカがファウルをもらいPK獲得。バッカ自らが蹴るもキーパーがセーブ
42分 シワススポルGOAL>>右サイドのクロスからヤタバレがヘディングでゴール
57分 ビジャレアルGOAL>>久保の左コーナーキックからDFのフォイトがヘディングでゴール 【久保EL2アシスト目(今季通算2アシスト目)】
64分 シワススポルGOAL>>ゴール前のFKをグラデルが直接決める
74分 ビジャレアルGOAL>>途中出場のパコ・アルカセルがチュクエゼのパスからシュートを放ち一度はキーパーにセーブされるも自ら押し込む
78分 ビジャレアルGOAL>>パコ・アルカセルがDFラインのフォイトからのパスを受けキーパーとの一対一を冷静に制す
久保・ビジャレアル詳報
ビジャレアルは、ローテーションを採用し、リーグ戦のスターティングメンバーから大きく変更。久保も今季初のスタメンを飾っている。フォーメーションはこれまでと大きく変わらず、状況により4-4-2、4-2-3-1、4-3-3になるシステムで臨んでいる。トップがバッカ、2トップの一角あるいはトップ下が久保、右がチュクエゼ、左がバエナという攻撃陣でスタート。
今季初出場の選手もおり、連携面などの質が心配されたが、特に問題は生じていない。ビジャレアルの質の高さを感じるゲームとなった。
一方試合展開は乱打戦に近く、双方で合計8ゴールが生まれている。やはり欧州の大会である。ゲームの質は全体的に高く、ミスや集中力を少しでも欠くとほぼ100%ゴールが生まれるというコンペティションであることを実感させられた人も多いだろう。そうした中で得点を多く奪え勝利したビジャレアルは陣容の底上げにもつながり、勝ち点3とともに収穫の大きな試合になったと言える。
さて、久保であるが、ようやく持っているクオリティを存分に見せてくれたと言えるだろう。1ゴール2アシストというMOM級の働きで勝利に貢献している。
やはり最初のゴールが大きい。このゴールで前の試合でのリズムの悪さ、プロ初退場のショックが一気に拭い去れ、自信を取り戻した。その後いつものハイレベルなプレーが継続的に披露されたことがそのいい証拠だろう。
バッカへのアシストは洒落たタイミングと強さとコースのパスであるが、こうしたプレーは選ばれた選手にしかできないものであるし(往年のレドンドやアイマールを思い出すパスであった)、CKによるアシストも左サイドからの左足というアウトスイングの軌道のパスであったが見事にピンポイントで合わせている。チームに勝利をもたらす疑いようのない特筆すべきクオリティである。
今季初のフル出場になったことから終盤は息切れしていた感は否めないが、ほぼ90分ボールが最も集まり、チームのリズムをつくり、周りのシュートチャンスをつくり、自らフィニッシュに絡む動きは10番プレイヤーのそれである。同時に途中から流れを変える選手ではなくスタートから長い時間チームに影響力を与える選手であることがはっきりしたことも確かである。
欧州の大会で1試合3ゴールに絡んだこのスコアは日本人選手最年少記録だろう。ようやく10代で欧州の大会で結果を出す選手が出てきたことは喜ばしいことだ。
ただそれ以上に素晴らしいのは、前の試合で悪かったリズム、精神的にも落ち込んでいた状態からわずか一試合で浮上したことだ。他の日本人選手ならこういう浮上の仕方はしない。このまま沈んでいくか、悪戦苦闘が長く続く日々になるだろう。悪かった次の試合で複数ゴールに関与しチームの勝利に大きく貢献した久保のこの結果は彼がプレーレベルで突出していることに加え精神面でも他の日本人選手とは一線を画していることを改めて示しているものと言えるだろう。
戦術面においても、この試合では様々なシチュエーションを見ることができたのも収穫だ。エメリは久保をトップ下あるいは2トップの一角でスタートさせている。これは久保に現在怪我で離脱中のジェラール・モレノとほぼ同じポジションと役割を与えていると見ることができる。つまりエースの役割を期待していたわけだが、それに見事に応えている。
また後半からは久保を右に移し、左にチュクエゼを移している。緻密な戦術変更が好きな監督らしい采配だが、エメリの中で久保の序列が変わった瞬間だろう。
これまでチュクエゼは右アタッカーの優先順位一位タイであったが久保のやりやすさを優先しつつ二人をピッチに残すためにチュクエゼを初めて左に置いている。チュクエゼより久保のストロングポイントを優先した采配である。アシストを決めたCKもキッカーを久保が初めて務めたことによるものだ。監督の指示もあったかもしれないが、チーム内で序列の変化が間違いなく生じた瞬間であったように思う。
この序列の変化はその後途中出場してきたモイ・ゴメスのプレーからも感じ取れた。ゴメスは相当久保を意識し、久保が近くにいても、ショートコーナーのタイミングで久保が寄っていっても自分がインパクトを残すプレーを優先していた。これは間違いなく序列が変わったことによる焦りである。彼のポジションは左サイドであるが、この試合のエメリの采配を見れば彼にとってはチュクエゼと久保がライバルになったと感じたに違いない。
いずれにせよ、久保はまた一つ壁を乗り越えた。想像よりはるかに早く乗り越えてしまったことには驚きを隠せない。
またリーグ戦では前節退場処分で本来次の試合には出られなくなるはずだったが、処分は取り消された。モレノを負傷で欠く今は久保にとってはチャンスのタイミングであり前節の退場でそれを少しフイにしたかな、と思ったものだったが、運も味方にしてその問題も排除できた。この試合の活躍により中2日とはいえ、次の試合も出場のチャンスは大きいだろう。出場停止や怪我など出場できない不運に見舞われずチャンスをつかみ取ることもワールドクラスに到達する選手には必要な要素である。
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